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「っくしょ〜、やっぱ見えないか〜……」 窓際で曇天を見上げながら悔しそうに呟く京の声に、新聞から目を上げる。 「この時期に晴天を期待する方が間違いだと思うが」 「いいだろ〜!?気分の問題だよ、き・ぶ・ん・の!!」 『気分か……』といった呆れた表情で肩を竦め、 立ち上がってその場を去って行く背を見送って 再び目を天空へと戻しながら、深い溜息を洩らす。 ーーー今や、泣き出してしまいそうな色に空は変化を遂げていた 「まあ1年振りの逢瀬なんだし、人目を憚る事なくイチャイチャしてェよな……そりゃさ〜」 「えらくトんだ解釈だな……」 そう言って目の前に差し出されたマグカップを受け取ると、 ふんわりとしたコーヒーのいい香りが鼻孔をくすぐる。 その芳香に沈みがちだった気分を浮上させながら振り返ると、 庵は既に元の位置に腰掛け、自分の分のコーヒーをすすっている。 わざわざ相手の分も用意してくれた気遣いに感謝の意を込めて、 その端正な顔に微笑みを返しながら、カップを傾ける。 ちゃんと京好みの味になっているコーヒーに更に気をよくして、 窓際から庵の隣へと移動する。 「1年に1度、星の海で好きな人と会えるなんて、ロマンティックだよなぁ…」 「それはそうだが……この曇天では気分が台無しだな」 「??何でだよ」 肩に頭を預けて来る京の髪を撫でながら、ニヤリと笑うと、 少し体を引いて京の頭を自らの膝へ導いた。 「『この者は俺のモノだ』と世間に知らしめる事ができんだろう?」 「っわサイテー……でもまあ庵らしいっちゃらしいな!!」 問いの解答に楽しそうにケラケラと笑うので、庵にも自然と笑みがこぼれ、しばらくお互いに微笑みあう。 「そういえば……出掛けた時に店でこれをもらったんだが」 「ん?何?」 京を膝から起き上がらせ、傍らに置いてあった袋から何かを取り出す。 中からは小振の笹の枝と、短冊が数枚入っていた。 「せっかくもらったのだし、何か願い事を書くか」 「いいな、やろうぜ〜!!」 互いに短冊を手に、何を願うか考える。 「庵、何書いた?」 「無病息災」 「ジジくさッ!!」 「そういうお前は何だ?『卒業』か?」 「うっさいな〜、余計なお世話だっつの」 京はしばらくチラチラと相手を伺いながら短冊を眺めていたが、 「あ〜……何も思い付かね〜から、後で書こっと」 と言ってそそくさと逃げるようにその場を後にする。 何を願うつもりなのか、おおよそわかっている庵は、その後ろ姿に苦笑しながら、 自らも眠りにつくため、その場を後にした。 翌朝、飾った笹を片付けるべく手に取った庵は、 笹に自分とは違う、もう1枚の短冊が結んであるのに気付いた。 その主が周囲にいないのを確認して、そっと短冊を手に取る。 「‥‥‥‥‥‥‥‥」 普段、京にさえ見せた事のないような優しい微笑みを浮かべると、 その短冊をそっとポケットに仕舞い込んだのだった。 おわり 何とか七夕の内に!!と思って書き上げてみましたが…… 急造仕様でワケわかんない、タダのラブラブな話になってしまいましたね〜(苦笑) ちなみに、短冊に何が書かれてあったかは、皆さんの御想像にお任せ致します。 …………思い浮かばなかったってのもあったり?(笑) |