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新生バンド・オブ・ファイターズ、略してB.O.F ドラムにテリー=ボガード、キーボードに不知火舞、 ギターに二階堂紅丸、ボーカルに麻宮アテナ、 そしてベースに俺、八神庵のメンバーも揃い、 演奏曲の練習や当日の段取り調整など準備に追われている内に、 あっと言う間に時は経ち―――― 遂に12月12日がやってきた―――― まずは『打ち合わせ』と称しライブハウスへ向かい、 会場のセッティングの最終チェックを行い、 次に、京を祝う為にやって来たパーティー参加者を迎え入れ、 あとは主賓の登場を待つのみ。 「じゃあ旦那様、奥様のお迎えヨロシク〜〜」 茶化して会場を沸かせる二階堂を一睨みして、自宅へと車を飛ばす。 ―どんな顔をするか見物だな。 マンションに到着し、部屋へ向かう為足を進める。 似た力を持っているからなのかどうか定かではないが、 俺はある程度の範囲であれば京の気配を探る事が出来る。 京にもそれは備わっている筈なのだが、そういう話を聞いた事がないので、 草薙家にはおそらく、その力はないのだろう。 部屋に近付くにつれ、京の気配がハッキリとしてくる。 ―が、どうやら玄関先にいるようだ。どこかへ行くつもりなのか? とりあえず中へ入ろうとノブを掴む。 「うわわわわッ」 ドアが引かれるのと同時に京の身体が倒れ込んで来る。 流れに任せて受け止めると、 状況が理解出来ていないのか驚いているのか、 俺の腕の中でしきりに鼻を擦っている。 「ひてててて……」 「大丈夫か」 「おっおう、サンキュな」 呼び掛けると顔を上げて俺を見る。 鼻を強打したらしく、少し赤くなっている。 すると急に目を見開いて突き飛ばすように離れて行く。 …どうやら往来でのこの姿勢がヤバイ事に気付いたようだ。 俯いて隠しているようだが、顔がほんのり赤く染まっている。 その表情についてからかって楽しみたいところだが、 今は時間がない。 「出掛けるのか」 「―は、え!?…あ、晩メシの用意買いに行こうと思って」 動揺した様子でしどろもどろに答えて来る。 「そうか」 誰かと会う予定があるのかと思ったが、違ったらしい 「あのさ、お前も一緒に―――――」 「その必要はない」 「―――は?」 「説明は後だ、ついて来い」 頭に[?]マークを浮かべてような奇妙な顔のまま 車に乗り込んだ京は、 「説明って?」「どこに行くんだ?」だのと質問を 絶えず投げかけて来る。 ここでバラしてしまっては面白くないので、 「行けばわかる」 ―とだけ告げておいた。 隣では不服そうに 「何なんだよ〜〜」 と頬を膨らませている。 その表情に苦笑しながらライブハウスの駐車場に停める。 キョロキョロと周囲を見回して場所を確認しているらしき京を 横目に見ながら携帯を開き、二階堂を呼び出す。 「俺だ、到着したから準備してくれ」 承諾の言葉を聞く事なく通話を切る。 「何?お前のライブに招待してくれんの?」 終わるのを見計らっていたらしく声を掛けて来るが、 あえて何も言わずに『入れ』と顎だけで指示する。 京は京で眉間に皺を寄せて、不思議そうに首を捻っている。 扉を開けると、中は既に暗くされており、 参加者達も沈黙を保っている。 不安そうに入って行く京を見届け、後ろ手に閉める。 急に何も見えなくなった事で焦ったらしい京が 振り返るのが気配から読み取れる。 「な…何するつもりなんだよ、おま―――」 パパパパン!! 「な、何だァ!?」 音と主に照明が戻り、ポカンとした表情の京が照らし出される。 「誕生日おめでとーー!!!」 周囲から綺麗に揃った祝いの言葉が投げかけられる。 ―が、まだ状況を把握出来ていないらしく、アホ面を晒している。 「何ボーッとしてる」 苦笑しながら京の頭にまとわりついたクラッカーの中身を 払いのけてやると、ハッとしたように俺を見る。 「今日はお前の誕生日だろう。 だから皆で祝ってやろうという事になってな」 あくまでも[他の者が企画した]と装って説明してやる。 [俺が]とは言う気にならないのでな。 驚いたような、嬉しそうな瞳が俺を見ている。 「そんで、お前に内緒で色々計画したってワ・ケ」 俺の後を繋ぐように二階堂が言う。 邪魔に入るタイミングが絶妙だな、お前。 「驚いたか?」 「ああ…マジでビックリした…… ぁ…有難うな……スッゲェ嬉しい……」 イタズラが成功したように笑う二階堂はどうでもいいが…… 少し目を潤ませて礼を言う京から目が離せなくなる。 「よっしゃ!!って事で 皆!!騒ぐぞーーーー!!!」 「「お――――――――――――――っ!!!」」 二階堂の声を合図に、静かだった会場が騒ぎだし、 京はバーカウンターへと引っ張られて行く。 満足そうに座って、気分は王のように ふんぞり返っている姿に苦笑が洩れる。 そこへ群がって行く者達に、隣に座って睨み付けてやりたかったが、 こちらにもする事があるので仕方なくその場を離れ、控え室へ向かう。 「あ、庵さん来ましたね」 「遅ェぞ〜八神」 ドアを開けると、中では麻宮と二階堂が既に準備を始めていた。 これから行うB.O.Fのライブの最終リハーサルをすべく マイク調整やギターのチューニングをしていたようだが…… 「テリーのやつが見当たらんが?」 「あれ?さっきまでいたのに!!私探してきます!!」 「俺も行く。ったくいつの間に…」 バタバタと慌ただしく去って行く足音。 ……ようやく控え室が静かになったか。 俺はベースを爪弾いてチューニングしながら、 ゆっくりと目を閉じ、京の姿を思い描く。 京達とB.O.Fとして活動していた頃は、 まだアイツとこういう関係ではなかったし、 俺もそういう対象として見ておらず、ただただ 疎ましく憎むべき存在としての認識しかなかった。 それなのにバンドを組まされ、「何故こんな奴と」などと 腹を立て、事あるごとに喧嘩していたものだ。 それが今となっては………―――― ……過去に思いを馳せてどうする。 意識を掻き消すようにチューニングに集中する。 そうしている内に、足音と声がこちらへやって来る。 「もう、時間がないんですよテリーさん」 「悪かったって、サッサとリハ、始めようぜ」 「よし、こんな感じだろ」 「―――ああ」 「じゃあそろそろステージに行きましょうか」 「OK!!」 二階堂の合図でリハを終え、ざわめきがいまだ絶えない会場へ向かう。 コツコツとそれぞれの靴音だけが廊下に響いている。 「ああ……今頃ドキドキしてきました〜〜〜」 「All right、適度にキンチョウしてる方がイイんだ、大丈夫」 「そうなんですか?そう言ってもらえると、気分が楽になります〜」 仲の良い兄妹のような会話を続けている前方の2人。 それを見て…かどうかはわからないが、 隣を歩く二階堂が、俺を見てヤケにニコニコしている。 ハッキリ言って気味が悪い程の満面の笑顔だ。 今までの経験からいって、コイツがこういう顔をしている時は いい事が起こらない――俺にとっては。 何か俺に対して良からぬ事を企んでいるようだ。 この期に及んで、何をする気だ、貴様。 ―いや、既に何かしている可能性もあるな。 何をしたのか聞きたいところではあるが、 既にステージへ上がる階段を登るところで、 仕方なく満面の笑顔のままでいる二階堂を睨んでステージへ上がる。 「京さん、お誕生日おめでとうございます!! 今回はお祝いとして、1日だけの新生B.O.Fを結成しました!!」 会場の照明が落とされ、ステージとカウンターのみ明かりが残される。 麻宮が話している間にセッティングをしつつ、 ほんのりと明るいカウンター席に目をやる。 偶然ではあったが、京も俺を見ていたようで、視線が絡み合う。 その顔には『いないと思ったらそこにいたのか』と ありありと書かれていて、思わず笑みがこぼれる。 それに反応して頬を赤く染めているが、 周囲にバレたくないようでキョロキョロと見回している。 ……本当に飽きのこない面白い奴だ 「それじゃあ聞いて下さい!![Open Your Eyes] 3.2.1 GO!!!」 テリーの軽快なドラムと二階堂のギターがかき鳴らされ、 京の為だけの新生B.O.Fバースデイライブが、今 始まった―――― 麻宮や二階堂の歌を含める計10曲を演奏し、 会場の盛り上がりは最高潮にまで高まった。 いまだ興奮冷めやらぬといった様子で、会場はざわめきたっている。 控え室へ向かう俺を、二階堂が呼び止めた。 「後はおれたちで勝手に盛り上がっとくから、 残り時間は2人で楽しんでこいよ」 そう言うと会場から京を連れ出し俺に押し付けると、 にっこりと微笑みながら会場を追い出される。 2人で呆然とその場に立ち尽くしてしまった。 俺は別にそれでも構わないが… 京はどうしたいだろうか 「紅丸もああ言ってるし……帰ろっか」 「―――ああ」 紅丸にどう言われたのか気にはなったが、 とりあえず自宅へと車を走らせる。 騒ぎ疲れた様子で、京は窓の外を流れて行く景色を 何も言わずじっとみつめている。 通り過ぎる明かりに照らし出された横顔は幸せそうで、 今日した事は間違いではなかったと、心が満足感で満たされる。 「あのさ………庵…」 自宅に戻り着替えていると、背後から京が何か言いたげに ためらいつつも口を開く。 「今日…あんな凄い誕生日パーティにしてくれて有難う 凄い……スゴイ嬉しかった」 「そうか」 着替えを済ませ、幸せそうに微笑む京の頬を撫でながら、 寄り添うようにベッドに腰掛ける。 「俺さ…庵と一緒に過ごせれば……庵に『おめでとう』って 言ってもらえたらそれだけでイイって思ってたけど……… 沢山の人に『おめでとう』って言ってもらって……」 俺の手に自分の手を添えて顔を擦り寄せながら、 瞳を熱く見返して来る。 喋っている内に感極まってきたらしく、 次第に瞳が潤みを帯び、何とも色っぽい。 「そんなスゲェ事を庵が『やろう』って言ってくれて……… 俺………俺………―――」 段々と目に溜まる涙が、耐えきれずにポロポロと零れて行く。 その姿に愛しさが溢れ、そっと引き寄せてきつく抱き締めた。 京もそれに応えるように背中に腕を回すと、嗚咽を洩らし始めた。 落ち着くまで、愛おしい存在の感触を確かめるように そっと背中を撫でてやる。 ……二階堂のせいで知られる事となってしまったが、 より喜ばせる結果になったようだし、 今回のところは勘弁してやるとしよう。 ……それであの解きニコニコしていたわけか。 ようやく落ち着きを取り戻したらしく、 赤くした目鼻のままこちらを見上げて来る。 本来ならばここで襲い掛かるところだが、 ここはグッと堪えて立ち上がり、 目許を冷やす濡れタオルとアコースティックギターを 持って隣に再び座る。 不思議そうな顔をして見守る京にニヤリと笑いを返す。 「俺が弾くのは見たが…歌うのを見た事がない、と言っていたからな」 そう、これが俺からのささやかなプレゼントだ。 京が好きだと言っていた、この曲に想いを込める。 I do I love you so I'm never ever gonna let you go Just listen to my heartbeat in your arms,I belong I'm never ever gonna let you go Please take me to heaven 'cause everyday I live for you everything I do,I do for you Yes,tonight tonight Tell me that you're mine Take me high above we'll fly away Hold me tight,so tight and love me forever I'll catch the star I'll be your moon I need you in mylife Give you my all Because I love you I do I'm so in love with you いまだ余韻冷めやらぬように、 うっとりとした表情の京に近付いて、 耳元にそっと囁く。 「Happy Birthday and..........」 1年お待たせしました(汗)庵サイドからのお話でした。 庵の口調での文章はかなり難しかったです…… 普段あんまり喋らない庵が、心の中で何を語るのか、 何だか普通の人ってかヘタレっぽい感じになってしまいました(涙) ホント申し訳ない限りでございます…… ちなみに、[ブルームーン][アンバードリーム] [ムーランルージュ][プッシーキャット]は実在するカクテルです。 [ブルームーン]は23度[ムーランルージュ]は11度くらいですが、 [アンバードリーム]は43度もあり、かなりキツいお酒です。 [プッシーキャット]はノンアルコールドリンク(ジュース)ですよ〜 最近カクテルに凝ってるもので…使ってみました。 前半はパーティーに至るまで、後半は前作の庵サイド、 という事でまとめてみました。 ホント難しかったです…………… でも京がこう思っている時に庵がどう考えていたか、 お分かり頂けたのではないでしょうか? どこまでもバカップルで申し訳ない!!! そしていつまでもお幸せにvv |