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「むうううううう〜〜〜〜〜〜………」 妙な唸り声を上げつつ、シャーペンを口にくわえながら教科書を睨む京。 彼の周囲には本が山積みにされており、様々な教科が待ち受けているらしい… 「ヤベエ、全然わからん!!マズい、マジでマズイ!!」 バンバンと机を叩きながら何やら叫んでいる姿を見かねて、 休憩を促すように紅茶入りのマグカップを持って来た庵が、 呆れたようにため息をつきながら相手に差し出す。 「さっきから何をゴチャゴチャと喚いている」 「……ああ、悪ィ。来週テストなんだけどな?授業出てない所を ユキのノート見せてもらってんだけど、全然わかんなくて………」 「それで唸っていたというわけか……」 顔が引きつっている辺り、かなり切羽詰まった状況のようで、 ハハハ……と笑う声にも力を感じない。 心底困っている様子でこちらを見上げる京に、また溜息が洩れる。 「仕方ないな……」 「………?」 そう言って部屋を出て行ったと思ったら戻って来た庵を、 首を傾げつつ眺めると、先程までなかった眼鏡が掛けられている。 「お前、眼鏡なんかかけてたっけ?」 「集中する時にはな……それよりどこがわからないのか言ってみろ」 「……ん?」 「先日休ませたのは俺のせいだからな、教えてやると言っている」 「………!! ///」 『先日休ませた』原因とは、しばらく仕事で会えなかった分庵が暴走し、 ナニ(ぶっちゃけHな事)に励み過ぎて京がl腰の痛みで動けなくなり、 やむをえなく学校を休んだという事なのだが……… その時の事を思い出してしまい、京が首まで真っ赤に染める。 「……何だ、思い出してその気にでもなったか?」 「バッカ言ってんじゃねェ!!そんな事より、勉強がマジヤベェんだって!! 頼む、助けてくれ〜〜」 「わかったわかった」 珍しく泣き言を言って来る京に目を見張り、 冗談も通じない程余裕の無い様子に苦笑しながら、ノートを受け取る。 そこには世話好きなユキの性格がよく現れており、今回のテスト範囲などが 綺麗な字でわかりやすく丁寧に記されていた。 ……まるで庵が教える事が前提にされているような内容で、思わず口元が緩む。 それを咳払いで誤魔化しつつ、京が『ここは?』と尋ねる部分に的確な説明を施して行く。 「………既に2年も留年しているのだから、わかりそうなモノだがな」 「う る せ ェ よ!!」 「しかしまあ、正確に理解は出来ているのだからバカではなさそうだ」 「………一言多いんだよ、テメェは」 ただ要領が悪かっただけで、庵が説明すれば理解していく京に 感心しつつも、だったら何故留年しているのかと呆れなくもない。 ……まあ京の性格を考えれば今までを理解出来なくもないが。 しかし今回は随分とやる気を出しているようなので、庵の説明にも力が入る。 数学や古文などと順調に勉強が進み、今は少しの息抜きにと漢字の読み問題を解かせている。 さすがにポエマーらしく文科系は得意なようで、スラスラとひっかる事なく進めているようだ。 「?」 上級問題にさしかかったのか、京が首を傾げて悩んだ様子を見せる。 それを見ていた庵が体を乗り出してきた。 「………どうした」 「ん?いや、この字なんだけどな?見た事ある字なんだけどさ〜、わかんねェんだよ。 何て読むんだ?」 そう言って指し示した字を見て庵が答える。 「………すきだ」 「!?」 あまりに突然な発言に、顔を真っ赤に染めながら動揺を隠せない様子で パクパクと金魚のように口を開閉させて庵を眺める。 そのやけにオーバーなリアクションを不思議そうにみつめたまま、首を傾げる庵。 ようやく我に返ったらしい京が、赤い顔はそのままに叫ぶ。 「な………ッ何言ってんだお前!!」 「? だからすきだと言っている。聞こえなかったのか?」 「………………………………………」 「…………………………………?」 何だか微妙にズレているような気がする会話に、京も同じように首を傾げる。 「……何だって?」 「ちゃんと聞け、だから『隙』だと言っている。戦闘で最も見せてはいけないもの。 そこを突かれては命取りになる、あの『スキ』だ」 「………………………………………」 「…………………………………?」 詳しく説明を入れてやったというのに、相手は変わらず釈然としない表情を浮かべている。 ようやく納得がいったらしく、ポンと手を打ってあーあーと声を上げて何度も頷いているが、 何故かその顔が先程と同じように真っ赤に染まっている。 「そっか『スキ』な、ハイハイハイ」 再びクルリと背を向けると、そっかーだのナルホドねーだのと 静かだったのが嘘のように何やら感心しながら問題を進めて行っている。 何を勘違いしたのか、と呆れるように溜息を洩らしながら、 庵は再びその背を見守る位置に移動した。 勉強はいまのところスムーズに進み、今は京が最も苦手とする 『英語』へと移っている。しかし試験は単語を覚えれば文法的にさほど難しいものはない。 ……あくまで『庵にとっては』の話ではあるが。 苦手科目という事もあり、京はしきりに首を傾げては庵に尋ね、その意味を聞いて来る。 庵は丁寧に各単語の意味や成り立ちを説明しながら、問題を解いて行く。 とある問題にさしかかったところで、何やら京がチラリと庵を伺う。 またわからない問題があるのかと近寄ると、文章を指差した。 「こッ……これ、何て読むんだ?」 He whispered that it has loved in me. 指差された一文を見て、先程の動揺の意味と、今京が求める事の意図を 正しく理解したらしい庵は、ニヤリと口元を歪めると、 京の背中に覆いかぶさるように抱きすくめ、その耳元に顔を寄せる。 「愛している」 「!!!!!」 ペロリと舐め上げるおまけをつけて耳元で囁くと、声にならない悲鳴を上げながら 庵から逃げるようにバッと身を引いて距離を取る。 「ななななななななななッッッ!!!!」 「『彼は私に「愛している」と囁いた』それを実践しただけだ、何を驚いている」 意地の悪そうな笑みを浮かべながら、その様子を面白そうに眺めている庵に、 もはやマトモな言葉も発せられない程に動揺したらしく、 京は片耳を押さえながらトマトのように真っ赤になって睨む。 逃げ場を奪うように、京の両脇に腕を置いて、再び顔を近づける。 「……こうして欲しかったのだろう?」 そう言ってニヤリと笑うと、己の企みがバレてしまった京は 『図星です』と言わんばかりに、再び首まで真っ赤になって俯いてしまう。 「バ……バッカじゃねェのお前!! ホホホントにわかんなかったんだっての。 この文章を真に受けてんじゃねェよ」 「…それはこちらのセリフだと思うが?」 「………………ッ!!!」 更に墓穴を掘ってしまい、もう何も言えずなくなったらしく、 う〜とかあ〜〜とか唸っているので、その姿に苦笑しつつ、庵は再び顔を寄せる。 「京」 「何だよ」 「これ以上やっても勉強に集中出来ないだろうから、今日はこれまでにしろ」 「……そうしたのはどこの誰だっつの」 「だから今日の授業料を今請求させてもらう」 「は?授業りょ………ッ!?」 思わず顔を上げてしまったと気付いた時には遅く――――― 京の言葉は庵によって封じられてしまった。 「んッ……んぅーーーーっ!!」 驚きのあまりに停止していた思考が復活すると、 抗議するようにジタバタと京が暴れ出し、ドンドンと背中を叩いて来る。 それに応じる気はないと言うように、庵は何度も角度を変えて唇をついばんだり、 舌を絡めたりと、京の怒りを奪い取っていく。 「はっ………ふぁ……ッ」 数分後。 唇が解放された時には、抗う気力さえも奪われたかのように、その手は力なく庵の腕を掴み、 表情はうっとりと艶めいたものに変わっていた。 それを満足そうにみつめながら、京の腰を抱き寄せると、 「続きはお預けだ」 と囁き、いつの間に書いたのか、小さなメモを机に置くと 庵は部屋を出て行ってしまった。 「チックショーーー…あッのエロ魔人が〜〜〜〜〜〜………」 腰も立たない程キスだけで骨抜きにされてしまった京は、 消えたドアを殺気のこもった目で睨みながら悪態を吐く。 「だけどまあ……言わせたい事は聞けたから、いいかな」 次の瞬間には、嬉しそうに微笑み、先程の言葉に頬を染める。 意味が違っていたとはいえ、今まで聞いた事のなかった『好き』という言葉や 『愛している』という言葉が聞けただけ良しとしたらしい。 「……ん?」 教科書を片付けて眠ろうとして、先程庵が残していったメモに気付く。 簡単に折り畳まれた紙を開くと、そこには英文が書かれていた。 When test ends, giving the highest ecstacy. どういう意味だろう、と首を捻りながら、まさか庵に直接聞くわけにもいかないので、 仕方なく仕舞いかけた英語の辞書で、書かれた単語の意味を調べていく。 ―――試験が終わったら、至上の快楽を味あわせてやる 「……………ッ!!!」 その後、その紙はビリビリに破かれたものの、 試験終了から3日、京は何故か学校を休んだらしい。 おわり。 久々に何の記念でもない小説を書かせて頂きました〜。 ネタ的にはベタな話なんですけどね?(笑) 勉強を聞くフリしていつもは言わない事言ってもらうっていう。 ……思いついた自分でニヤニヤ笑ってしまいましたよ(笑) どこまでいってもバカップルですいません!! あと、英文はMacについてる自動翻訳みたいなので作りました。 間違い……ではないですが、そんな感じ、程度に読んで下さいね(汗) ちなみに3日も休んだのは庵さんとナニをしまくったからですが(笑) その理由をクラスメイトに聞かれて、恥ずかしくて大暴れしました、京ちゃん。 なので恐くて誰も真相を知らないという事でしたv |