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1週間前。 町内や駅前に見慣れない張り紙を、買い物の途中に庵と歩いていた京が目敏くみつける。 「何だこりゃ?『100万人のキャンドルナイト 貴方も参加してみませんか?』」 内容を読むと、夏至の夜8時〜10時の間、家の全ての電気を消し、 キャンドルの灯りだけで過ごす環境イベントが行われるようで、その参加者を 募集しているチラシらしい。 「ふーん、何か面白そうだな」 興味をひかれたらしく、キラキラした眼で庵に同意を求めるように見る京に、 自分は興味がなかったものの、そういう目で見られてはNoとは言えず、 京に対する己の甘さに庵は溜息を吐きながらも同意し、そのイベントに参加する事にした。 当日。 夕飯を早めに済ませると、京は時間までに使っていない部屋の電気を消し、 メモリーが消えたりなどの影響のないものの電化製品のプラグを極力抜き、 満足そうに頷きながらリビングに戻ると、その表情に苦笑しつつ、 庵がキャンドルを準備して待っていた。 「気合いが入っているな」 「まあな〜♪」 「それではここも電気を消すぞ」 開始時間になったので残ったリビングの電気を消し、 己の指先に灯した焔でキャンドルに火を灯す。 「そういや、俺のだろうとお前のだろうと、どっちの炎で点けても炎って赤くなるんだなー」 「温度の問題だろう」 「ふーん。……あ、消してみて初めてわかるけど、意外にあれこれ電気ってついてるもんだな。 小さいのがポツポツあちこち点いてる。完全な闇ってのはブレーカーでも落とさない限り、 やっぱ無理かー…」 灯る小さなライトに触れつつ、リビングを点検するようにグルリと回る。 「あまり動きまわるとぶつけるぞ」 「俺はガキか…いてッ!」 その声と共に何かにゴツッとぶつけたらしい低い音が響く。 「……それみたことか。いいから座れ」 苦笑する庵にソファに座るよう促されるものの、京はベーッと舌を出して (キャンドルの側ではないので庵には見えなかったらしい)ベランダへ出て行く。 「まだ明るいなー、あんま参加しねぇのかな?……………おー」 言っている内に家々の明かりが消え、辺りは段々と薄闇に包まれていく。 「スゲェ、すっかり真っ暗だ!…でも街灯とか高速道路の明かりはさすがに消せないもんなー、 そう考えると外は結構明るいもんだな。家の中の方が暗く感じるぜ。 それに日中クソ暑く感じたけど、今は涼しいなー」 遠くをキョロキョロと見渡しながら楽しそうにはしゃぐ側に、 タバコに火を点けながら庵もやってきて、眼下に広がる闇を眺める。 「電気を使う事で出るCO2が熱を持っているからな、使用しない事で減少する分 涼しく感じるのだろう…闇というのも視覚的に涼しさを感じるのかも知れんが…」 「へー、じゃあこういう事ってマジで環境に優しいんだなー…これやってみて正解かもな。 ……あー、でも今日晴れてりゃよく星見えたんだろうに、雨っつのが残念だ〜」 「まあこれはこれで風情があるし、何より涼しくて良かろう」 「そうかもな。………そういや、ウチにそんなキャンドルあったっけ?」 リビングのテーブルでほのかな灯りをもたらす、ガラスに入った赤いキャンドルを 指差して、不思議そうな顔で京が尋ねて来る。 「バカもの、こんなシャレた物があるわけなかろう。この日の為にわざわざ用意したのだ」 「そうなのか!有り難なー、庵ーv」 「………全く、やろうと言い出した貴様が普通は用意するものだぞ」 心底呆れたように眉をひそめつつ、紫煙を吐き出しながら庵が溜息混じりに言う。 「…ッカタい事言うなって(汗)でも、これからどうするよ?まだまだ時間あるぜ?」 それに気まずそうにひきつった笑いを返しながら、それ以上追求されたくないのか、 家の中へ戻りながら、わざとらしくも話題転換をしてくる。 「そうだな…お前と環境問題について話し合う気はないしな」 それに乗って同じように戻りながらも、皮肉を返す事を忘れない(笑) 「テメッ…!」 「かといって特にする事もないし、まずは風呂にでも入るか」 「そういやまだだったなー…って一緒に入んのかよ!」 「湯が節約出来るし、環境に良いと思うが?電気だけが環境問題ではないしな。 それにキャンドルは1つしかないのだ、闇の中で待っているつもりか?」 「う〜………それはやだ」 「ともかく行くぞ」 そう言う庵にキャンドルを渡され首を傾げていると、いきなり抱き上げられる。 「ちょっ…!」 「暗いからな、先程のようにぶつけられても困る、こうしていれば安全だろう? しっかり持っていろよ」 ほのかな明かりに照らされて、ニヤリと笑う庵に頬を染める。 脱衣所で下ろされると、庵はそのキャンドルを浴室へ運び、天井近くにある棚に置く。 それを覗き見ながら、背に話し掛ける。 「あんな所に棚あったっけ?」 「今回用に吸盤で付く棚を買って来たのだ。貴重な明かりが濡れては困るのでな」 「…………用意周到だなー………」 「感心してないで入るぞ」 心底感心しているらしい京に、もはや文句を言う気にもなれず。 浴室から洩れる薄明かりを頼りに、衣服を脱ぎ捨てていく。 「お〜、キャンドルの明かりだけで入る風呂ってのも、雰囲気があっていいな」 「ああ、浮かび上がるお前の裸体かヤケにセクシーに見える」 「……んな事言ったって、ゼッテェしないからな」 「わかったわかった」 庵の欲を含んだ妖しい発言に反抗しつつもうろたえている様子に、 薄明かりではわからないものの、顔は真っ赤になっているのだろうなと苦笑しつつ、 庵は体を洗う。先程の発言もあって、庵の視線から身を隠すように、湯船に浸かった京が 淡い明かりに照らされる姿をボンヤリと眺めている。 「そういうお前の方がエロいじゃん……」 「何か言ったか?」 「なっ何も言ってねぇよ!(汗)」 思わず口をついて出てしまったが、流す水音に掻き消されていたらしく、 庵にはその危険発言は聞こえていなかったようで。 顔がハッキリ見えなくて良かったと、つくづく思う京でありました。 ちなみにこの後、キャンドルの明かりのムードに盛り上がってしまい、 寝室でやっぱり「そういう事」になってしまった2人でありました(笑) おわり。 [100万人のキャンドルナイト]の日に日記に載せたお話でした。 同じように部屋の電気を消して、ろうそくの灯りの中で考えました(笑) 携帯にポチポチ打ち込んで作りましたよ〜。 相変わらずのバカップルなのが申し訳ないですけどねv あと、「そういう事」が気になる!!と要望を頂いてるのですが…… 以前「ギャング!!」に収録した漫画と内容カブりそうなので、 申し訳ないですが今回はこのままで終わります。 |