窓辺にたたずみ、ぼんやりと夜空に浮かぶ月を眺めている京。
部屋は闇に包まれており、月の光のみが淡く京を照らしている。

「月を見る度思い出せ……か……」

ポツリと、誰に言うでもなくつぶやく
「んなモンなくたって、思い出すっつ〜の」
思わず月に向かって言ってしまった自分に、自嘲に似た苦笑を浮かべる京。


ーそう、いつでも考えるのはあの男………「八神 庵」の事だけだった。
意識すまいと努力しても、結局は庵中心に物事を考えめぐらせている。
……そこまで自分が夢中になるとは、正直思ってもみなかった。


窓越しの月に手をかざし、その輪郭を愛おしそうに指先でなぞる。
「ったく…俺ばっかお前にハマッて………バカみたいだ…」
月に向かって文句を言ってみる。もう一度月の輪郭をなぞる。
突然、何を思ったか、窓にハ〜ッと息を吹きかけて窓を曇らせると、そこに指で文字を書き始める
「庵のバーカ」
書いた文字と同じ事を口に出して言ってみる。

「何だ」


「お前がちょっとでも……ちょっとでも本心を見せてくれたら………俺も楽になるのに……」




「そうか……」


「ーって、えっ!?」
後ろから声がしているのにようやく気付き振り返ると、
暗闇の中に腕組みをしてたたずんでいる庵の姿があった

「ーなっ、なな何、おおお前、いいいいつからそこにいた!?」
幽霊でも見るかのような驚きようで、顔を赤くしながら慌てている京。

「さっきから。ーしかし随分気付くのが遅かったな……」
「るせェ!!か、帰って来たんなら明かり位つけろっての!!」
恥ずかしさのあまり、京はだんだん逆ギレを起こして来たようだ。
「いや…お前が空を見てたんで、月見でもしてるのかと…邪魔すると怒るだろうしな」

その気遣いに気を良くしたのか、京はフウッとためいきをつくと、窓を離れ庵の元へ。
「ーならせめて、『ただいま』位は言えっての」
庵は自分の元へゆっくりと京を引き寄せると、優しく抱き締める。

「ーただいま…」
「おかえり」

しばらくそのまま抱き合っている2人。
ふいに、庵が口を開く。
「…………すまん」
思わず京は顔を上げる
「ーん?」

「お前がそんな風に考えているとは知らなかった……不安な思いをさせていたんだな……すまない」
京はしばらく庵の顔をみつめていたが、再び庵に抱きつく。
庵は理解できず、京に声を掛けようとする。

「きょ……ー」
「今の俺にはその言葉だけで……庵がこうやって側にいてくれるだけで十分だよ」
庵の顔を見て、にっこりと微笑む京。
「京………」



「ーんじゃあさ、さっきの月見の続きしようぜ。
 俺お前と2人でしようと思って団子とかビールとか買って来てあんだよ。
 取って来るからその辺り座ってろよ〜」


ムード最高潮で、コトに及ぼうと伸ばした庵の手をスルリとすり抜け、部屋を出て行く京。

「……………………」

庵のやり場のない手は、しばらくの間むなしく空をつかんでいた……



●おわり●

またやってしまいました〜、クッサイラブラブ話〜〜(汗)
好きだから勘弁して(笑)
今回お気に入りのシーンは、月に手を伸ばす京。
演出的には気に入ってます〜、イエ〜。
十五夜のお月様を見ながら思い付いたネタでした。