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「リハーサル終了、本番開始は30分後ですので、メンバーは控え室で待機して下さい」 ゾロゾロとステージを降りて行くメンバーの中で、庵だけは階段を使わず壇上から飛び下り、 真直ぐに京のいるカウンターに歩み寄って来る まだぼんやりとしている京の腕を取り、 「行くぞ」 と声を掛け立ち上がらせる。そこでようやく我に返り立ち上がると、庵より先に歩き去ってしまう それを見てクスクスと笑う桑原に、庵は睨むのを忘れなかった 「な〜な〜、ステージに立ってる時のい……八神てカッコイイのな、俺初めて見た」 控え室に続く廊下を、庵の歩調に合わせるように歩きながら、興奮覚めやらぬといった感じで京が語る 「俺もマジメにギター習っときゃ良かったなぁ………」 などとブツブツ呟く京に苦笑しながら、控え室に招き入れてやる。 このえの時にはそれどころではなくじっくり見なかったのか、物珍しそうにあちこちを見て回る 「ーで?俺の疑いは晴れたのか?」 ドアを閉めながらそう告げると、ハッとしたように京が振り返る 「………知ってたのかよ」 「あれだけあからさまな態度では、気付かない方がおかしいな」 ベースを壁に立て掛け、椅子に腰掛けながら、 フッと笑う庵をうらめしそうに睨むが、その顔は赤く染まっており、効果は薄い 「だ、だって…お前のルックスの良さを女はほっとかねえし、俺はお前の過去なんて何も知らねえし…… あんな電話掛かって来たら、誰だって勘違いするぜ?」 弁解もなけりゃ決定打だよ、と辛そうに言う京を、庵は傍らに呼び寄せ、腰に腕を回して抱き締める 「あの時……相手がこのえだって教えてくれてれば、俺はこんなにヘコまずに済んだんだ…」 庵の頭を抱き締めながら、小さな声で呟く 「お前を電話に出させた事で秘密はないと示したつもりだったが…逆効果だったようだな」 ふむ、とうなづいて、京の顔が見れる位置まで体を離す 「まぁ…嫉妬に燃えるお前はなかなか面白かったがな」 「ぐっわ……サイテー!!!」 ニヤリと笑う庵に真っ赤になって殴ろうと手を振り上げるが、受け止められ両手を封じられてしまう 「だがもう罰は受けた」 「え?……うぅわ」 何かしただろうか、と考える方に意識を集中した途端に、腕を引き寄せられ、胸元に倒れ込んでしまう。 危ねェな、と呟いて半身を起こすと、目の前にはかすかに微笑む庵の顔が 「拒んだだろう……あれは傷付いたぞ」 「んな事、思ってもねえクセに」 軽い頭突きを食らわせて微笑み合う。するとドアがノックされ、本番時間が近い事を告げる 「本当はここでお前を貪りたかったが……時間がないのでは仕方ない」 上に乗っている京を立たせてやりながらそのまま立ち上がると、壁に立て掛けたベースを取り上げる 「終わったら覚悟しておけ」 軽く唇を奪ってドアを開ける 「バーカ、そういう体力もなくなる程、ライブで燃えてこいっての」 その背に京の悪態を受け、かすかな微笑みを浮かべながらじゃあなと手を振り、ステージへと消えていった その夜、ライブの余韻がいまだ覚めやらぬ様子で自宅に戻る2人。 少し飲んだ酒のせいもあって、上機嫌で京が騒いでいる 「ステージに上がったこのえってば別人なのな!庵もカッコ良かったけど、このえもカッコ良かったぜ〜 そんで『夕陽と月』!!リハでも良かったけど、ライブのラストにあれが来ると泣けるぜ〜〜!!! ビバこのえ!!って感じだよなぁ……」 隣の部屋で着替えを済ませて戻って来た庵への言葉がそれだったので、少しムッとする 「……あれは俺が作ったんだ。詩は別だがな」 「マジで!?へ〜……お前って作曲もするんだ、スゲエな〜」 ベッドでポンポンと楽しそうに跳ねながら、やたらとハイテンションに京が感心する 「明日で良ければその曲、弾いてやろうか。せっかくのお前の誕生日だしな」 「……そういえばそうでした」 言われるまですっかり忘れていたらしく、ポンを手を叩いて言う 「……自分で忘れていては世話はないな」 苦笑しながら京にゆっくりと覆い被さり、ベッドに組み敷く。京も抵抗せずに、そのまま庵を見上げる 「その前に、朝までは俺との遊戯を楽しんでもらう」 そう言う庵の首に腕を回して引き寄せると、ニッコリと微笑む 「歌ってもらいてぇから、そのくらいの気力は残しておけよ」 「お前こそ、聞く気力が残っていればいいがな」 そうして互いに挑戦的に微笑み合うと、シーツの波の中へ埋もれていった おわり 2002年の草薙京の誕生日祝いに書いた、PC版限定小説です。 PCなのでページ数気にせずに書けて楽しかったです〜 嫉妬する京が書いてみたかったんですが……女々しい(汗) こんなハズではなかったんですがねえ……(遠い目) そしてCDドラマ「夕陽と月〜プロローグ〜」に登場したキャラにも登場してもらいました 最初登場させるつもりではなかったんですが、 庵がヘルプで参加するボーカルの女性、という事で、 映像が浮かび易い人物としてこのえサンに登場願いました。 数年後の話なので、昔のこのえでは全くないんですが、 彼女の基本的性格はこんな感じだろうという事で、勝手に変更。 桑原パパはあんま変わらないんですけどね。 そしてこのえの歌う『夕陽と月』やら、ドラマでの話を京に絡めてみたかったので…… イイカンジに仕上がったと思ってます。 |