『バレンタインのお返しは3倍返しが鉄則!!
 ホワイトデーに向けて、オンナノコ達が欲しいものをランキングで紹介!!』
昼飯を買いに立ち寄ったコンビニで、気紛れに手に取った雑誌の表紙にはそう書いてあった。

「3倍……かぁ」
そう呟いてニヤリと笑うと、京は買い物もそこそこに急いで帰路についた。


ーホワイトデー 当日ー
満面の笑みを浮かべて、新聞を読みソファでくつろぐ庵を見る。
しばらくその視線を甘んじて受けていた庵だったが、京がそのまま何も言ってこないので、
遂に無言の圧力に負け、溜息と共に新聞を折り畳む。
「言いたい事があるならハッキリ言え」
「ーん?」
キョトンとした顔で見返して来るところを見ると、何を言われているのかわかってないらしい
「『ん?』じゃない、何を期待しているんだと聞いているんだ」
相変わらず不思議そうな表情のままの京は、しばらく考えて
「ああ!!」
と何かに納得してポンと手を叩く。
「ごめんごめん、考え事してたんだ」
紛らわしくてごめんな〜、とケラケラ笑う様子に、怪訝な表情を隠せない庵
「………考え事の割にはヤケに楽しそうだな」

「なあ八神、バレンタインデーのお返しは『3倍返し』なんだって知ってたか?」
「………何だそれは」
悪戯っぽく微笑んだ京の言葉に、あまり世間に興味のない庵は
不可解だといわんばかりの表情を浮かべる。
「何でも、バレンタインデーにあげた3倍以上の金額の物を、
 ホワイトデーには返さないといけないって決まりがあるらしいぜ〜?」
まさに雑誌の受け売りそのまま、といった口調で嬉しそうに言い、
『拳の万倍返し』ってのは聞いた事あるんだけどな〜、と語るその言葉の影に、
何となく言わんとしている事を感じ取る。
「ーで、要は俺に『3倍返しをしろ』という事なんだろ?」
「ピンポーン♪っつーワケで、何かよこしやがれ?」
眼の座った微笑みで、明らかに脅迫ととれる口調で庵に手を差し出す。
やれやれ…と呆れ気味に肩をすくめた庵が、ふと何か案を思い付いたようで、
京に気付かれない位置でそっと口元を歪める。

「ならば、お前も俺に『3倍返し』をしてくれるんだな?」
「…………へ!?」

言われてようやくそこでバレンタインデーでもらった物を思い出す。
ーヤベェ!!『3倍返し』の文字に喜んで、自分もしなきゃいけねえってのをスッカリ忘れてた!!!(汗)
「どうやら完全に忘れていたらしいな」
そんな事だろうとは思ったが、と溜息をつく庵の前で、
京はもらった腕時計の予想される金額の3倍額を割り出して
餌を求める金魚のようにパクパクと口を開け閉めし、青ざめている。
その表情にはありありと『どうしよう』の文字が。
「……まあ俺はお前にそんな高額のものを期待してはおらんが…
 お前が『3倍返し』を望むなら、対等にそれを望まなんと釣り合いが取れんし…」
庵がそう言うと、悲しそうな顔でこちらをみつめてくる。
さしずめ『でも俺にはそんな金ないよ〜!?』といったところか
それを確認した庵は、ニヤリと笑う。

「そこで俺から提案だ」
「おっ……おう」

何となく庵が意図する展開が読めるので、半身後ずさりながらその提案を促す。
「金がなければ身体で返すのが世の鉄則。よって俺への『3倍返し』はお前自身を差し出せ。
 俺はそれで充分満足だし、お前にとっても金がかからないのだから悪い提案ではないだろう」
ーやっぱりな……
予想通りの提案に内心ガックリとしながら、ふと気付く。
「そりゃまあ元手がゼロなんだから悪くはねえけどさ、
 俺への『3倍返し』がそれってのは、ちょっと納得いかねえな」
自分からのプレゼントが『手作りケーキ』なのに『3倍返し』を求めている辺り
あまり強く抗議できるものではないが、何か理不尽なものを感じて異義を訴える。
言われた庵は『こういう時には意外に頭が回るな、野生の勘か?』などと密かに感心している。
だがそこで負けてはいられるかと策を練る辺り、京の上手をいっている。
「よし、ならば3日間お前に手を出さないと誓おう、これでどうだ」
「ぃよっしゃ、その話のった!!」
即決してしまう辺り『3日間手を出さない』という本人からの条件は大きかったようだ。
…………庵が内心ほくそ笑んでいるとも知らずに。

「では早速、お前の身体を頂くとしよう…」
そう言って寝室へ続くドアを開ける「八神庵」という名の悪魔に促され、
京は策略の罠へと自ら進んでいく。
京に背を向けてドアを閉めた瞬間の庵の顔には、勝利者の笑みがありありと浮かんでいた……





「はうぅぅぅ………迂闊に『3倍返し』とか言うもんじゃねえな……」

ベッドからもはや1歩も動けない状態に陥るまでその身体を貪られ、突っ伏した姿勢で後悔する。
あとの祭りだと分かっていても言わずにはおれず、
隣で呑気に自分を眺めている庵を見ながら、弱々しく語る。
「結構楽しんでいた奴が何を言うか…」
疲れを微塵も感じさせない物言いの庵に『バケモノかお前は!!』と叫び出したいのに、
身体が言う事を聞かず、
とりあえず睨んではみるものの、今の状態ではそれすら効果は薄い。
「しかしな……あんなにヤラれるとは思ってもみませんデシタよッ」
何とか力を振り絞って叫ぶも、「フッ」と鼻先で笑われて終わる。
「腹上死は覚悟の上だ」
ケロリと恐ろしい事を言いながら、指先から焔を生み出し煙草に火をつける。
そんな行動に見蕩れる自分を誤魔化すように
「サイッテーーー!!!この3日間、マジで指1本触らせてやらねェからな!!」
と叫ぶと、痛む身体にムチうって蒲団を頭まで被り、庵に背を向ける。

背後では庵がクックッ……と楽しそうに笑いを洩らしている、そんな声を聞きながら
ー俺も相当こいつに参ってるよなぁ……
庵に聞こえない音で嬉しそうに呟いて、体力回復の為に眠りに専念する事にした。



おわり

2003年ホワイトデーに合わせて書いてみましたが、ホワイトデー全然関係ないですね。
………あっ、ありました!!(ニヤリ)…何かは皆さんのご想像にお任せします(笑)
それにしても、庵さんは一体何回ヤッてしまわれたのでしょう……
そして普段は何回なのか、全ては謎のままにしておきます。
皆さんのお好きな回数でどうぞ!!(笑) 
   しかしまあ本当にクソが付く程中身がない………(汗)
エロには気合いを入れてみましたが………どうよ?(聞くな)
お楽しみいただければ幸いです。
そして神原は「ホワイトデーは3倍返しで」っていうのを今頃知ったバカ者です。
いつの間にそんな風習が!?(汗)