中忍試験本戦へ向けての修行に誰もが明け暮れる毎日。
かくいうナルトも伝説の三忍の1人・自来也の下で口寄せの術修得に励むも、
相変わらずオタマジャクシしか呼び出せずにいる。


「チックショ―!!何でダメなんだってばよォ〜〜〜」

ダンダンと地面に足を悔しそうに叩き付けていると、
カラコロと音がして自来也がやって来る。

「オイナルト、今日はこれくらいにしておくかのォ」
「え〜〜〜?俺ってばもうちょっと修行したいってばよ〜」

ぷうっと頬を膨らませて抗議の意を表すナルトの側に寄り、
頭をグシャグシャとかき混ぜる。

「そう言うな、今日はイイ所へ連れて行ってやるから、のォ」
「―!!何!?ドコ行くの!?エロ仙人ってばよ!!」

途端にパッと表情を変えるナルトに
「ゲンキンな奴だのォ」と苦笑を返しながら、
修行場である川辺を後にする。





「時にナルト、お前『七夕』は知っとるかのォ?」

街へと続く道をのんびりと2人で歩きながら自来也が尋ねてくる。

「ん〜〜〜?何かお星様のお祭り……みてェなモン?」

自分の記憶をアレコレ辿って考えたらしいが、色んな物がゴッチャになっている。
少し引き攣った笑いを返しながら、

「まあワシらにとっては概ねそんなモンかも知れんがのォ…
 そもそも七夕というのはな、
 年に一度7月7日の1日だけ、織姫と彦星という恋人達が天の川を渡って会える日でのォ
 2人の願いが叶えられる日にあやかって、
 笹に願い事を書いた短冊を吊るすと叶うっつーモノなんだのォ」

「願いが叶うの!?」

話を聞いている内に、キラキラとナルトの目が輝きだし、
ワクワクした表情で質問の答を待つように見上げる。
その子供らしい表情にニカッと笑いを返す。

「………単なる迷信だがのォ。しかし、己の夢をそうやって宣言する意味もあるからのォ。
 おのずとやる気も生まれ、努力するようになるだろうからのォ……
 あながち『嘘だ』とは言えんのォ」

「俺さ!俺さ!!そしたら絶対ェ『火影になる』って書くってばよ!!
 ーあ、でも今やってる口寄せの術も出来るようになりてェし……
 そうなると一楽のラーメンもいっぱい食べてェよな……
 うわ〜、いっぱいあるってばよ〜〜〜〜」

自来也の言葉に興奮を増して、ピョンピョンと回りを跳ねながら
あれこれと喋っているナルトの背を、微笑ましそうに眺めながら、
さらに道を進んでいく。

「―あ!!それよりもさ!!」

ピタリと動きを止めて、自来也を振り返る。
何だろうと自来也が少し後ろで同じように動きを止める。

「その『オリヒメ』と『ヒコボシ』って人達、ちゃんと会えるとイイな!!」

ニカッと笑うナルトに、一瞬驚いた表情を浮かべた自来也だったが、
「そうだのォ」と答えて同じように笑い返しながら
先程よりも強く髪をかき混ぜる。
何するんだと腕を振払おうと暴れるナルトと、
自来也の楽しそうな笑い声を響かせながら、
夜の闇はゆるやかに訪れ始めていく。










「うへぁ〜〜〜……何だってばよ〜〜?」

ナルトと自来也が街に戻ってみると、そこは沢山の人で賑っており、
はぐれないようにするのがやっとだった。

「今日明日と祭りをやっとってのォ。
 お前さんも息抜きにどうかと思ってな」

人込みを抜けた所で立ち止まり、振り返ると共に言い放つ。
その言葉に嬉しさで一瞬顔を輝かせたナルトだったが、
周囲を見回してハッと何かに気付き、すぐに俯いてしまう。
そのまましばらく黙っていたが、意を決したようにパッと自来也を見上げる。

「俺ってばもう忍になったし。もうこういうガキくせー所に興味ねーってばよ。
 一楽でラーメンでも奢ってくれんのかと思ったのにガッカリだっての〜〜」

頭の後ろで腕を組んで目を細めるようにしてニッコリ笑う。
「今から奢ってくれてもイイ」と軽快に笑い飛ばす。
その表情に自来也の表情が真剣なものに変わる。

「んじゃ俺もう帰んね、また明日だってばよ〜」

相手から何も反応がないのを「奢ってくれない」と判断し、
サッと背を向けて人込みを避けて裏道へ消えていく子供。


「無理しおって……」

強がりだとわかっていたが、「これ以上触れるな」と
全身で拒絶する姿に、何も言えなかった己を恥じる。
普段呑気にしているから忘れてしまいがちだが、
あの子は九尾の『器』として生を受け、
里の者から『忌むべき物』の烙印を押され、
常に拭い去れない影を背負っている。

「たった齢12のガキに……何て重いものを背負わせとるのかのォ…」

流れていく周囲に目を向けて、半ば自嘲気味に呟いた言葉は、
賑わう雑踏に掻き消され、誰の耳に届く事もなかった―――




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