「ナルト〜〜、今日も早めに終わるぞ」

ひたすら印を組み、チャクラを練り上げながら集中していたナルトの下に、
覗きを終えたらしいダラけた様子で自来也がやって来る。

「俺はまだ修行するから、エロ仙人は帰ってイイってばよ」

む〜〜んと唸りながら更にチャクラを練り込んでいく。
そこへバシン、と頭に手が置かれて、衝撃と驚きでチャクラが霧散してしまう。

「だ―――――ッ!!もぉッ、邪魔すんな――――ッ!!!!!」

ガーッと牙をむくと、妙に真顔な相手の顔をみつけて、思わず怯む。

「お前のォ、い〜〜〜っつもチャクラ空っぽにして倒れとるのを介抱して
 家に連れて帰ってやっとるのは誰だと思っとるのかのォ?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥う」
「師匠の言う事は黙って聞くもんだ……のォ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
優しくたしなめられてしまっては何も言えなくなり、
コクリと頷きを返す。
自来也とて自分の都合で言っているのではなく、
自分を心配して言ってくれているのだと思えば、
それはむしろ嬉しい事だ。

昨日と同じように2人で道を帰りながら、
自来也の先を駆けるように歩きつつ、振り返る。

「そんでそんで?何で今日は早く帰んの?
 俺今日はそんなチャクラ使ってないからまだ元気だってばよ?」

不思議がるナルトの横で、チラリと視線を下ろす。

「今日は7月7日、七夕だのォ?」
「……ああうん、そうだってばよ?」

そういえばと思い出したように答えるナルトをよそに、
フフン、と嬉しそうにニヤけながら顎に手をやりツルリと撫でる。

「織姫と彦星が天の川のほとりで1年振りの再会を喜び合う。
 そんなロマンチックなシチュエーションを利用して、
 『星を見に行こうか』なんつって女の子を口説いたら……
 そりゃもぉワシにメロメロだの―――――――!!!!!」

グフグフと1人の世界で悦に浸りながらハートを飛ばしてくる自来也に、

「っつーかナンパしてェ為に早く終わったってーのかゴラァ―――ッッ!!!」

あまりの予想通りな発言にしばし呆然とするも、
ブチ――ンと音がしそうな程怒りを沸騰させるナルトは、
力の限り声を振り絞って自来也に猛抗議。
「ヌカ喜びさせやがってェ」とゲージは一気に振り切れる。

「当然、次の本執筆の為の取材は必要だからのォ」

平然と返された言葉にテンションは一気に下降。

「もぉ、いい……先に帰るってばよ……」

ガクーンと脱力して項垂れ、疲れが一気に押し寄せたような
力ない言葉を返して、自来也に別れを告げる。

その横を、パタパタと走り抜けていく子供に、2人の目がとまる。
手に握られた物が揺れる様を、ナルトの力ない目が捉えた。

「父ちゃん父ちゃん!!早く帰って飾り付けしようよ〜」

少し遅れてのんびりと歩いて来た父親に、子供が駆け寄って
早く早くと腕を引っ張って急がせようとする。

「わかったわかった」

困ったような声を出しつつも、その顔は嬉しそうで、
幸せそうに微笑む父親。
ナルト達には気付かず、そのまま過ぎ去っていく。

「今年は上手く作って皆に自慢してやるんだ!!」
「そうか〜、失敗しないようにな」
「む〜」

楽しそうに笑いながら手を繋いで街に消えていく父子の姿を、
夕焼けに染まる空の下、ぼんやりと立ち止まって見送る。


「……なぁ、エロ仙人」
「―ん?」


姿が完全に消えるまで見送った後、
ようやく歩き出したナルトがポツリと呟くように声を掛ける。
ナルトを待っていたワケではないが、
何となく一緒に立ち止まっていた自来也が声の主を見下ろす。


「何で……七夕に笹なんだってば?」


「はァ?」


まさかそんな突拍子もない質問をされると思ってもみなかったので
裏返りそうな声を上げて目を丸くする。
『さすが意外性No.1とカカシが称するだけの事はあるのォ…』
などと思いつつ、問いに答えてやる。

「笹はもともと神聖なものとされておっての?
 だからきっと天に捧げる物として使われたんだろうのォ
 ……おお、そういうえば魔除けに用いられる事もあったらしいのォ」

「へえ〜……魔除けか〜…」

どこか虚ろな響きで呟きながら歩くナルトの背を見ながら、
自来也は何かを思い付いた、ニヤリと口を歪めた。















「オリヒメとヒコボシ………ちゃんと会えたのかなぁ……」


運良く本日は快晴となり、夜空には満天の星々が瞬いている。
ナルトは自宅のベランダに出て、欄干から足を投げ出して
ポカンと口を開けながら空を見上げている。

「1年に1度しか会えないのは辛いだろうけど……
 会えた嬉しさはスゲエんだろうな〜〜〜………」

プラプラと足を揺らして、自分の事のように嬉しそうに微笑む。

欄干に頭をもたれかけさせて、想うのはただ1人の事。
この空と々髪と瞳を持つ、同じ班のエリート忍者。



「アイツはどうしてんのかな…」










「こんな所におったのか、どうりで返事がないワケだのォ」
「っっっっっどわぁあぁぁあぁぁぁぁあッッ!!??」

背後から突然降って来た声に、飛び上がりそうな勢いで後ずさりながら、
力一杯の悲鳴を上げる。

「お前のォ……忍が後ろに気付かんでどうする……」

至近距離からの大音量に耳を塞ぎながら、呆れ果てた様子で溜め息をつき、
どかりと腰を下ろして、ナルトと同じように星空を見上げる。

「考え事でもしとったのかのォ?」

ニヤニヤといやらしい笑いを浮かべながらそう言うと、
まだ驚きから復活出来ていない顔を更に赤くして、バタバタと慌て出す。

「おおお……俺だって考える事はあるんだってばよ!!」
「ほほ〜〜……それはあの[うちは]の小僧の事かのォ?」
「なッ何でわか―――ッ!!!!!」

反論するつもりで思わず出てしまった言葉に、
慌てて口を押さえるが―事既に遅し。
それを見た自来也はゲラゲラと大声で楽しそうに笑う。
横では恥ずかしそうに、トマトのように真っ赤にしたナルトが俯く。

「エロ仙人はさぁ……そういうのキモいとか嫌だとか思わねーの?」
「何じゃ?やっぱりそうなのか?」
「ッ………!!」

さらに墓穴を掘るハメに。
もう何も喋るまい、と口を手で塞ぐナルトに笑いかけながら
自来也が真顔に戻る。

「まあ愛は色々ある方が面白いしのォ。
 非生産的だとか不道徳だとか言う奴もおるだろうが……
 好きだと思う気持ちは誰にも止められん。
 ワシは各々の自由だと思うがのォ」
「‥‥‥‥‥‥‥」

その言葉にナルトの強張った雰囲気が緩む。
それを見計らったように、自来也がニカッと口を歪める。

「しかしまさかお前があの小僧をのォ……
 意外とメンクイじゃのォお前!!」
「!!!」

驚きと恥ずかしさで更に耳まで真っ赤になったナルトに、
ガハハハと面白そうに笑いながら、バシバシと肩を叩く。

「お前をからかってるのも面白いが……そろそろ本題に入るかのォ」

いまだ笑いの収まらない弛んだ顔のまま、
後ろからゴソゴソと何かを持ってくる。

「ホレ、お前にこれをやろう」



渡されたのは―――小振の笹



「え……」
「今日は七夕だと言っただろうが。
 お前も願いを書くだろうと思ってもらってきた」

ぽかんと渡された物と自来也とを交互に見る。
目には戸惑いの色が浮かんでいて、
それを不思議に思った自来也が首を傾げる。

「何だ、あれだけはじゃいどったのに、嬉しくないのかのォ?」
「や……そうじゃねェけど……」
「?」

そのまま段々と俯いて、ナルトの顔が見えなくなる。

「だって…俺ってば九尾だし……魔除けなんか置いたら変じゃん…
 他の家にあんならわか―――――――」
「なーに下らん事グチャグチャ言っとるかのぉ!!
 ガキはガキらしく素直に受け取ってバカ騒ぎしとりゃエエっつーの!!」

つむじにビシィィッと指先で鋭く突かれ、
あまりの痛みに呻きも上げられず頭を抱えて蹲る。
『イチャイチャパラダイス』書いてても伝説の三忍、
腕っぷしは衰えていない(酷)

「ってェ〜〜……何すんだってばよォ…」

涙目で見上げると、目の前にズイと紙の束が。

「うちはの小僧と2人でラブラブする口実にはちょうど良かろうて
 ここがダメでもうちはの家にあるなら文句なかろう?」

悪戯小僧のようにウインクして、束を無理矢理押し付ける。
しばらくそれをみつめていたナルトは、
突然ガバリと飛びつくように首に抱きつき、顔を埋める。
小刻みに震えるその小さな身体を、
自来也は応えるように何も言わず抱き締め返してやる。


「―で、いつまで抱きついとるつもりだ?
 早く行かんと相手は寝ちまうぞ」

そう言われて、まだ涙に濡れる顔をパッと上げ、
ぐしぐしと顔を拭う。

「そんじゃ、行ってくるってばよ!!!」

満面の笑顔に戻って、見送ってくれる自来也に手を振る。

「うちはの小僧に宜しくのォ…」

そう背中に呟いて、懐から酒を取り出しあおる。
2人の悲しい運命に、これから幸多からん事を祈りながら。
天の川で出会う、2つの星の恋人に姿を重ねながら。

「星空を肴に酒とは……粋なモンだのォ……」




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