「ナルト、明日はお前の誕生日だろう?祝ってやるからウチに来な」

任務完了の報告書を届けに向かった受付で、
五代目火影・綱手は開口一番、ナルトにそう告げた。
唐突に言われた為、状況を把握できぬまま、
ポカンとした表情で立ち尽くす、ナルトを含む第7班。
何とかその状態から復活した当人があわあわと綱手に詰め寄る。

「でっでも、明日は―――」
「つべこべ言うな。
 迎えやるのも面倒だから…今日からウチに泊まりに来い、いいな」

ナルトの言い分をサラリと無視し、渡された報告書に目を通し、
承認の判を押しながらピシャリと言い放つ。
その勢いに圧倒されてぐうの音も出なくなり、ガックリと項垂れる。

「わかったらサッサと帰って準備しな!!」

半ば追い出されるように強引に受付から出て行く(行かされる)御一行様。
アカデミーの廊下を出口に向かいながらゾロゾロと歩く。

「何なんだよォ〜〜〜〜……
 オーボーって言うんだってばよ〜、こういうの〜〜〜〜」

先程の姿勢のまま、足を引き摺るようにダラダラと歩きながら、
力なく愚痴をこぼすナルトは、一行の最後尾にいる。

「火影様の命令なんだから、仕方ないでしょ〜、諦めなさいナルト〜」
「……………………」
「ま、イイじゃないか、火影サマのご好意なんだし。有難くお受けしとけ」

その様子を先に歩くサクラは楽しそうに眺めているし、
サスケは呆れたように溜め息混じりに横目でチラリと見ると、
サッサと先に進んでしまっているし、
カカシはカカシで横を歩きながらポフポフと頭を撫でながら、
面白そうにニヤニヤ笑いを浮かべながら宥めている(?)

「絶対ェ俺をネタに酒飲みたいだけなんだって〜の!!」
「そだろね。でもいんでない?お前お気に入りみたいだしサ」
「う〜〜〜〜〜」

  『それに、今の里は不安定だし、行く方が安全だと思うよ?
   火影サマもそれを見越しての事だろうしな』

「っ………」

ナルトにしか聞こえない程度の音量でボソリと呟くと、
その意図に気付いたらしくビクリと身体を強張らせる。

「ま、めでたい事だし。めいっぱい絡まれといで〜♪」

和ませるようにニコニコとした表情で言うと、
下から恨めしそうに見上げて来る。

「他人事だと思ってェ〜〜〜!!」
「だって他人事だもんv」
「ぅぐぅ……」

ハハハと笑いながらナルトの側を離れ、
ちょうどアカデミーからの出口という事もあってか、
解散と明日が休みである事を言い渡し、
カカシはボフンと煙だけを残してその場から消える。





その後もドンヨリとした雰囲気を漂わせたまま、
半ば現実逃避のように「何が必要かな〜」とか考えながら
最後尾を歩いていたナルトが、チラリと前方に顔を上げる。
そこには分かれ道にさしかかるまでと、
サスケに楽しそうに話し掛けているサクラがいる。
サスケもそれに適当な相槌を返しているらしく、
かすかな音がこちらにも聞こえて来る。

サスケへの恋心は自覚してしまった今、
その光景はちょっと面白くない感じで。
でも相手はこの気持ちを知らないし、
顔を合わせればどうしても喧嘩になってしまう。
サクラはサクラでやっぱり大好きな人だから、
何だかやりきれない気分のまま2人を眺めるしかなくて。

そんなモヤモヤとした気分でいると、
こちらの視線に気が付いたのか
先を歩いていたサクラが寄って来る。

「でも知らなかったわ〜、ナルト明日誕生日だったのね〜」
「うん、そうなんだってばよ〜」
「今気付いたんだけど、皆の誕生日とか凄く個人的な事って聞いた事なかったわね。
 もう一緒になって随分経つのに」
「そう言われれば確かにそうだってばよ」

ナルトにとっては九尾についてなど、語りたくない事も含まれるので、
逆に今まで聞かれなかったのは有難かったところもあるが、
やはり仲間の事は少しでも多く知りたいと思う。

サクラは横でポシェットからメモを取り出している。
こういうところが女の子らしくて可愛らしい。

「えっと、ナルトが明日で………サスケくんは確か7月よね」
「ああ」
「何日?」
「23日だ」

それを横からナルトが覗き込んで、書き進められて行くのを見ている。

「ふ〜ん、じゃあ今は俺より年上なんだ、サスケってば」

ムッと悔しそうに口を尖らせるナルトに、サスケの眉が寄る。

「ちょっとしか変わんねェだろうが、ウスラトンカチ」
「そのちょっとが何かヤなんだってば!!
 ………まあイイや。それよりサクラちゃんはいつなんだってば?」
「あたしは3月28日、この中では1番年下になるわね」

2人のやりとりを楽しそうにクスクス笑って見ていたサクラは、
少し残念そうな顔をしてナルトの問いに答える。

「でも1番しっかりしてるってばね!!」
「……お前が言うな」
「ぷーんだってば!! あ、俺さ俺さ!!
 ちゃんと覚えててお祝いするってばよ!!」
「うん、ありがと」

ニッコリと嬉しそうに微笑むサクラに、ナルトも嬉しくなって微笑みを返す。
1人だけ世界に入れないサスケは離れた所でフウ、と溜め息をついている。
その態度にカチンときたらしいナルトは、笑顔を不機嫌に変えサスケを睨む。

「はいはい……それで?ナルトは何か欲しい物ある?
 急だから大した物用意出来ないけど、出来るだけ希望に答えたいし」
「…………え?」

不穏な空気を漂わせはじめる場に割り入って、2人を止めつつ話題を変える。
一方ナルトは良く分かっていない様子でポカンとしている。

「何驚いてんのよ。仲間なんだからそれ位するわよ?
 あたしそんな薄情じゃないし」

ナルトのリアクションを「まさか祝ってもらえると思っていなかった」と
勝手に解釈して、照れ臭そうにブツブツと呟く。

「いや、そういう意味じゃなくて、明日は………
 里の慰霊式典がある日じゃん?」

言いにくそうに俯くナルトに、サクラは指先で鼻を弾いてやる。
あまりの痛さに鼻を押さえながら、顔を上げてくるナルトの顔を
両側からしっかり掴んで俯かないようにする。

「バッカね〜、それはそれでしょ?
 アンタの誕生日も慰霊式典も全然別の事じゃない。
 生まれて来て感謝する事はあっても、
 アンタが恐縮する必要はどこにもないの!!」

事情を知らないはずなのに、言葉が妙に的を得ているようで、
内心ドキッとするが、その反面で受け入れてくれているようで
嬉しさのあまり目の奥が熱くなる。

「―そんな事より。欲しい物、何かないワケ?
 あたしにはそっちの方が気になるんだけど」
「……えっと…………」
「ラーメンは却下だからね」

少しオドオドしながらも考え始めたナルトに、ビシリと釘をさす。

「ええッ!?」
「そういうのはカカシ先生とかに頼みなさいよ。他には?」
「ん〜〜〜と…………え〜〜〜っと………」

腕組みして必死に考えるナルトを見ていて、
ふとサスケと目が合い、お互い見合わせて苦笑してしまう。
そう言っている間にも分かれ道にさしかかってしまう。
サクラはしょうがない、と溜め息をつくと、

「すぐ思い浮かばないならイイわ。
 アンタが喜びそうな物をこっちでみつくろうから」
「ぁぅ…」
「それじゃまたね、ナルト、サスケくん!!」
「ああ」
「ばいばいサクラちゃーん!!」

そう言って曲り角に立ち、ブンブンとお互いに手を振る。
走り去るサクラの背を見送って、再び歩き出す2人。




「……………………」
「……………………」


太陽が傾き、空がまるで血のように赤く染まる時刻が訪れる中、
普段はナルトが何かとやかましく喋っているのだが、
それは今や過去の話。
サスケへの恋心を自覚してしまった最近はこんな感じで。
ナルトはナルトでドキドキして頭は真っ白なのでそれどころではないし、
サスケはサスケで何も喋ろうとはしない為、
ここのところ2人の帰り道は微妙な雰囲気をかもし出し、
重い沈黙を保ったまま別れていくのである。

「……おい」
「ななッ何だってばよ!!!」

俯いていた顔をガバッと音がしそうな程の勢いで上げ、
変に上擦った声で返答してしまった為、
サスケもかなり驚いたように目を見開いている。

「何ビビッてんだよ……」
「ベベッ別に!!それより何だってば?」
「ああ……いや、その…
 ホントに欲しい物、ねェのかと思って」

夕陽の照り返しでオレンジに染まったお互いの顔を見る。
心なしかそれよりも赤いように見えるのは気のせいなのか…

「ん〜、やっぱすぐには思い付かないってばよ。
 …………そ…それにさ!!」
「……?」

一旦切られた言葉の次を促すように、サスケが振り返る。


「それにさ!!祝ってくれるってだけで、俺は嬉しいってばよ!!」
「……っ」

ニッコリと照れ臭そうに、しかし心底嬉しそうに微笑まれて、
めったに自分に向けられる事のなかった笑顔に言葉を失っている内に、
ナルトは「またな!!」と言って駆け去ってしまった。






周囲に人がいないのを確認して、壁にドッと倒れ込むように背中を預けると、
はーーーっと深い溜め息を洩らしながら片手で顔を覆う。


「あの………バカ………」



悪態ともつかぬ呟きを吐いたその顔は、夕陽のように赤く染まっていた。































とりあえず、急造仕様でのナルト誕生日小説をお送りしました。
ナルトお誕生日おめでとう!!!
一応、まだ2人はくっついてないですけど、バカップルですな(笑)
ナルトよりサスケで締めてしまった…ダメじゃん(汗)


この後あれこれ続くんですが、それは没扱いにしてあります。
展開として自分で納得いかなかったので。
かなり長いですが…よかったら読んでやって下さいませv
[こちら]からどうぞ〜〜