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「来たってばよ〜〜、バァちゃーん」 「『お姉さん』って呼びなってあれ程言っただろ!!……まあいい、入んな」 「へへへ〜、お邪魔しますってばよ〜」 その夜、火影邸をを訪れたナルトは、 綱手に拳で小突かれながらも暖かく迎え入れられた。 導かれるまま奥へ進むと、居間らしき場所に炬燵が設置され、 そこには、夕飯の準備をしている綱手の付き人・シズネと ペット?のトントン、それから… 「エロ仙人が何でここにいるんだってば!?」 「だーからワシには『自来也』っつー名前があるっつの!! いい加減そう呼ぶのはやめてくれってのに……… お前に言っても無駄な気がしてきたのォ………」 驚いてナルトが指差した先には、『エロ仙人』と呼ばれて ガックリと頭を項垂れてしまっている、 火影である綱手と共に[伝説の三忍]の自来也がいた。 「明日お前の誕生日なんだっての〜、綱手に呼ばれたんで、 一緒に祝ってやろうと思っての」 「何か……どんどん酒盛り目当てじみてきたってばよ……」 これから予想される事態にウンザリといった表情を浮かべながら、 炬燵の空いている席へ座ろうと足を向けると、 「お前はこっちだ、のォ」 そう言って自分の膝をパシパシと叩く自来也を、 呆れたように半目で眺める。 「もう出来上がってんのかってば?」 「ワシャまだ一滴も飲んどらんっての… いいから座れっての」 「何なんだってばよ〜〜〜……」 促されるまま、不服そうに自来也の側に寄ると、 腕を伸ばしてくるので、何だろうと思っていると 脇の下を掴んで持ち上げられ、胡座をかいた脚の隙間、 ちょうど自来也に抱き込まれるような形でチョコンと座らされる。 「なっ……なっ!!」 気恥ずかしさと驚きで言葉を失ってアタフタしているのを、 大人3人は微笑ましげに見守る。 「そういていると親子みたいですね」 「だろう?似たもの親子ってのはこういうのを言うんだろうねェ」 クスクスと目の前で笑う女性2人に、男性2人は顔を見合わせる。 「「どうい意味だ」ってばよ」 「そういうところだよ」 思わずハモッてしまった両名に、ニヤリと笑い返して綱手が答える。 微笑み合う柔らかな雰囲気に、ナルトの心の中がじんわりと暖かくなる。 その感情が何なのかわからなくて考え込んでいると、 運ばれて来る料理を箸でつまみながら、 優しい光をたたえて、綱手がこちらを見ているのに気付く。 「そういやナルト、お前メシは食って来たのかい?」 「ん?うん、まぁ」 「何食べて来たんだ?」 「え〜と…」 「どうせまたカップラーメン食ってきたんじゃないのかのォ?」 「ム、いいだろ〜、何食べたってさ〜〜〜」 カップラーメンってバカにするけど美味しいんだぞ、 と見上げながら力説するナルトに、綱手が溜め息を洩らす。 「お前…そんなのばかり食ってるからチビなんだぞ? ……シズネ、こいつの分も何か作ってやんな」 「わかりました」 「………野菜多めにな」 「え〜〜〜〜〜!?俺野菜好きくね〜もの〜!!」 台所へ向かうシズネの背に、ボソリと呟くと、 ナルトが立ち上がらんばかりの勢いで綱手に反抗する。 「好き嫌い言ってるんじゃないよ、ガキ」 「むっか〜〜〜〜!!!」 ニヤリと勝ち誇ったように言う綱手に、 バンバンと悔しそうに机を叩くナルトの2人の様子を見て、 クスクスと楽しそうに笑いながら、シズネは台所へ消える。 振舞われた料理を美味しそうに頬張りながら、 酒を酌み交わす大人2人を交互に見比べつつ 何やら嬉しそうにナルトが微笑んでいる。 キョロキョロと動く頭に気付いた自来也が、 ほろ酔い顔で見下ろしてくる。 「何ニヤニヤしとるのかのォ?」 「えっ……あっ………そのっ」 気付かれていると思わなかったのか、 慌てた様子で一気に顔を赤らめると、 箸をくわえるようにして俯いてしまう。 その様子に、大人3人は[?]を浮かべて 不思議そうに顔を見合わせる。 「ナルトくん?」 「何だい?男ならハッキリ言いな、気になるじゃないか」 訝しげに綱手がそう促すと、困ったような笑みを浮かべた顔が ゆっくりと上がって来る。 「―――その……父ちゃんと母ちゃんって…………… こんな感じなのかなぁ……って」 ボソリと恥ずかしそうに呟かれた言葉に、3人が驚いた表情を浮かべる。 「…ホンットカワイイのォお前は〜〜〜〜〜〜 何ならワシの養子にしてやってもイイぞ〜〜〜〜〜〜〜vvv」 感極まったようにフルフルと震えたかと思うと、 後ろからギューーーッと腕の中へ閉じ込めて、 デレデレとしただらしない表情でスリスリと顔をすり寄せる自来也。 ここのところ自来也はめっきり父性本能に目覚めてしまったようで、 ナルトを溺愛し、親バカっぷりを発揮している。 「痛ェから離して欲しいってば……ぐ…」 ただし、その愛情は逆に気味悪がられているようで、 上手く伝わっていないようではあるが…… そんな中、綱手は1人俯いて、フルフルと肩を震わせている。 異変を感じたシズネが心配そうに近寄って声を掛ける。 「聞き捨てならないねェ…… こんな奴とあたしが夫婦だってのか!? 冗談じゃないよ!!こっちから願い下げだ!!!」 怒りの形相を露にした綱手がギロリと自来也を睨んでいる。 その射殺さんばかりの眼をまともに受けても 平然としている辺りはさすが三忍といったところか。 むしろニヤニヤと笑いを返している。 「ん?何じゃ綱手、そう言っとるワリには 顔が赤いようだがのォ?」 「酔ってんだよ!!」 「ホントに酔ってますね…綱手様……」 「グッスリ眠っちまったねェ…」 「アホ面してからに……… ワシの服にヨダレ垂らす気か?のォ…」 任務明けの疲労と酒の匂いにあてられたのか、 ナルトは自来也の胸に背を預けたまま、深く眠り込んでいる。 幸せそうに眠る頬をプニプニとつつくと、 何事か呟いて眉を寄せながら身を捩るも、一向に起きる気配は無い。 それを確認して微笑むと、ゆっくりと身体を横抱きにすると、 シズネが用意した寝床にそっと下ろしてやる。 「明日は…九尾に殺された者達への慰霊式典 しかも今里は大蛇丸の襲撃で不安定な状態だからのォ… お前がナルトを手元に来させたのは正解かも知れん。 明日、ナルトが無事でおれたかどうか…」 布団を掛け、髪を優しく撫でてやりながら、 真剣な面持ちで自来也がポツリと呟く。 「一般人ならナルト自身でも防ぎようはあるだろうが… 忍の中にも九尾を恨んどる奴は多いだろうからのォ…」 「新たな『火影』が据えられてまだ僅かだからね… 下手すりゃこれを好機にと、殺されてたかもな」 「ええっ!?そ、そんな!!」 「それだけ里の被害が大きかったって事さ」 ナルトが眠る部屋から出て、元の炬燵のある居間へ戻り、 再び酒を飲みながら、昔に思いを馳せる。 「ったく…この子の中に封印してなきゃ、 被害がもっと出たって事が何でわかんないのかねェ…」 「三代目火影様が、『あの子は里を救った英雄だ』って おっしゃってたのを聞いた事があります」 「おう、四代目と共に里を救ったんだからのォ… 人の心はわからん」 そう言った自来也の言葉を最後に、沈黙する3人。 シズネは立ち上がると、後片付けをすると言って 台所へ消える。 「しかしまぁ……お前がナルトを保護してくれるとは 正直意外だったがの」 静かに酒を飲んでいたかと思えば、 ニヤリと笑って綱手を見る。 言われた綱手は、少し照れ臭そうに視線を逸らす。 「あ……あたしは、アイツに過去に縛られた暗闇から 助けてもらったっていう、お……恩があるからね!! …………それに」 一旦言葉を切り、一呼吸置いて酒をあおる。 「それに、三代目のジジィが言ってたように、 里の人間はあたしの家族だからね。 ……まあ、アイツも息子のようなモンだし? 親として…ま、守る義務があるだろ」 自分で言って恥ずかしくなってきたのか、 酒で酔ったにしては赤い顔でブツブツと呟く。 その姿に三代目が重なるようで、 自来也は内心[火影としての自覚が出来てきたか]と感心しつつ、 酒をついでやる。 「何だかんだ言っとるがのォ… 結局ナルトを気に入っとるんだろうがのォ」 楽しそうにカッカッ…と笑いながら指摘され、 一瞬反論しようかと口を開くが、 フッと息を吐いて、自来也に向き直る。 「まあね」 その顔は照れ臭そうではあったが、 嬉しそうで、母親のように慈愛に溢れた、 優しい笑顔だった。 |