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そいつの存在は有名だったし、何より目立つから知っていた。 イタズラばっかりして怒られてばかりいる、 金の髪と青い瞳を持つ、アカデミーのドベ。 見た目だけでなくギャーギャーうるさい奴だから、嫌でも目につく。 元々接点があるわけじゃなかったが、 何をしていても耳に入る、自分の下らない噂に紛れて そいつにも親がいない事を知り、ほんの少し共感したが、 ただそれだけ。 自分は、一族を滅ぼした兄・イタチを殺すべく 強さを求め、復讐の道を歩むのみ。 アカデミーなんてその為の通過点に過ぎない。 ―――――そんな時だった。 俺の身に起こった[それ]はまさに 「青天の霹靂」というヤツで…… 下らないと思っていた感情に自分が陥るとは 本当に――夢にも思わなかった 「おっはよーってばよ!!サクラちゃ〜ん!!」 「お早うナルト、今日はいつもより遅かったわね」 「あ〜……うん。へへへ……ちょっと寝坊だってばよ」 第7班のいつもの挨拶を眺めながら、ナルトとサクラよりも離れた位置に サスケは背を預けている。 この距離が3人のいつもの位置であり、上司のカカシがここに 合流するまで、これが崩れる事はない。 「ええ――――ッ!?知らなかったってばよ〜!!」 「バカねェ、常識じゃない」 ナルトとサクラはいつもの他愛ない話題に花を咲かせ、楽しそうに笑いあっている。 最初の頃はサクラも鬱陶しそうにナルトをあしらっていたのだが、 チームとして日々を過ごす内に心境の変化があったらしく、 今では姉のように、優しく包み込むような微笑みでナルトに接し、 ナルトもそれに嬉しそうに応え、本当の姉弟のように見える程だ。 そんな2人の笑い声を聞きながら、サスケはひっそりと溜め息を洩らす。 何だかここのところ、イライラして集中力が落ちて来ている。 日々命じられる、Dランク程度のつまらない任務に嫌気がさしているのは確かだし、 早く強大な力を手に入れて、イタチを殺してしまいたいと焦る気持ちもある。 だがそれは今に始まった事ではなく、日々感じている事だ。 それが違うとすれば……連日の暑さで自律神経が参ってしまったとしか考えられない。 己の未熟さを恥じながら、サスケは再び溜め息をつく。 すると、それに気付いたらしいナルトが、何かを思い出したらしく「あっ」と叫ぶ。 サクラとの会話を中断させ、サスケの所へ駆けて来る。 「あのさ、あのさ、俺サスケにやろうと思って持って来たのを忘れてたってば!!」 「俺に?」 「何か最近、お前暑くて疲れてんのか知んえェけど、溜め息ばっかついてんじゃん? イルカ先生に聞いたら『ビタミン不足』とかいうヤツらしくて。 教えてもらったヤツをちょうどみつけたから、お前にやるってばよ」 そう言ってサスケの手に置かれたのはビタミン飴。 甘いのが嫌いだと言うのを考慮してくれたのか、 ご丁寧に[シュガーレス]表記のあるものだ。 「こんなんで効くとは思わなねェけどさ、貰ってくれってばよ」 「ああ……」 受け取りはしたものの、まだ事態が把握出来ずに呆然としているサスケを置いて、 逃げるようにサクラの所へ戻っていくナルト。 「ちゃんと渡した?」などと声が聞こえて来る辺り、 今回の不可解な行動はサクラの入れ知恵であるらしい。 そうでなければ、ナルトがあのような行動を取るハズがない、 と思いながら手渡された飴の包みを見る。 先程までのイラつきはナルトの奇行のせいで消えていたが、 今は複雑な気持ちが心の中に渦巻いている。 「ニブい子を相手にすんのも大変だな〜、サスケ」 サスケがもたれかかっていた木の上から、クスクスという笑い声と共に、 上司であるカカシが下りて来る。 事の一部始終を見ていたようで、ツボにハマッてしまったのか いまだ笑いを収められずに小刻みに震えている。 「……どういう意味だ。ワケわかんねェ事言ってんじゃねェ」 ギロリと震える背中を睨みながらピシャリと言い放つと、 カカシがその言葉に反応して瞬時に笑いをやめ、クルリと振り返りサスケを見下ろす。 そのままの状態でしばらく沈黙が流れた後、マスクと額当ての合間からのぞく 眠たげな眼がカッと驚いたように見開かれる。 「まさか……お前、自覚ナシ?」 『んまぁ』と口元に手を当てて驚くオバサン的ポーズで、 珍しいものでも見るようにカカシが言う。 「そぉっか〜…それなら色々と納得いくなぁ……」 「だから何の話だって聞いてるんだ」 1人でウンウンと頷き、しきりに納得しているカカシとは対称的に、 言われたサスケは心底訳がわからない様子。 「ん〜?無自覚は恐いね〜ってハナシ」 「??」 眉間に皺を寄せて怪訝な表情で見上げて来るサスケに ニヤニヤとした笑いを向けながら、顔を近付ける。 「お前最近、イラついて集中してないだろ」 「!?」 ひた隠しにしていたつもりの事実をあっさり言い当てられ、 さすが上忍であり上司だと、この時ばかりは感心せざるをえない。 「どういう時にイライラするのか、どうしてイラつくのか。 今日1日考えてみる事だな。 ……そうすりゃ俺が言ってた意味がよくわかるだろうさ。 ま、頑張んなさいね〜」 ポンポンとサスケの肩を励ますように叩くと、 「おぉっっそーーいっっ!!」とハモる2人の所へ向かい、 毎回お決まりの言い訳を始めるのだった。 |