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本日の任務は[雑草取り] いっそ火遁で燃やした方が早いのではないかと思いたくなる程の 広大な面積に、これでもかと草がビッシリと生えている。 「毎回思うけど、こんな所の雑草抜いて何するんだってば?」 「お金持ちの考える事って謎ばっかねえ…… っていうかこの炎天下に麦わら帽子付とはいえ、何やらすんじゃ!! 殺す気か!!っしゃーんなろ―――――っ!!」 「サクラ〜、気持ちはわかるけど、出てるぞ、声」 「あっ…」 内なる(もはや表に出ている)サクラの叫びはごもっともだと頷きたいが、 任務は任務。面々は愚痴をこぼしつつも作業を開始する。 サスケは表面では作業をこなしながらも、先程カカシに言われた事を反芻する。 『今の精神状態は悪くない、平常通りだ。 視界の隅にナルトのオレンジ色の服が見えて、モタモタしている様子が 雰囲気から伺えて気にはなるが……今は思考に集中しろ』 「お前ね〜…そんな抜き方しても意味ないでしょ? 根から抜かないとまた生えてきちゃうんだからさ〜……」 ここからは見えないが、カカシがナルトの作業に注意を入れているらしい。 「だってメンドクセーんだもの。こんなのサスケの豪火球の術とかで燃やしちまえば あっという間に終わるのにさ〜……」 「それじゃ任務になんないでしょうが。 …………ま、これ終わったらメシ奢ってやるから頑張りな」 「うおっマジで!?カカシ先生大好き――――!!!」 「ハハハ、ゲンキンだねナルトは〜」 ガバッと音がしてナルトが視界から消える。 何となく消えた先を振り返って見ると、カカシの首に抱き着いて嬉しそうにはしゃいでいる。 その様子に、何だか釈然としない気持ちが沸き上がり、心がザワリと揺れる。 『何だこれは……』 思わぬ己の変化に戸惑っていると、いまだ抱き着かれたままのカカシが こちらに顔を向けて、ニヤリと笑う。 その笑みが意味する事に気付き、ハッとして2人に背を向ける。 作業を続けながら、周囲をゆっくりと見回す。 確かに左にはナルトがいて、何やら嬉しそうに歌いながら草を抜いている。 しかしそれよりも遥かに見え易い右前方に、サクラが今も懸命に草を抜いている。 ……今周囲を見回すまで、その事に全く気付かなかったのだが。 思考に集中しながらも、見え辛いナルトを常に意識していたという事だ。 そう考えると、色々と思い当たる事が過去にあった事を思い出す。 「おいコラサスケェ!!お前何睨んでんだよ!!」とナルトに言われた事が何度もある。 怪我でもして翌日の任務に支障が出たら困るから、と ナルトの少し後ろの位置で、いつでも対処できるように任務を続けた事もある。 つまり……[ナルトをずっと見ていた]のだ。 イラついていたのも、ナルトが自分以外の誰かに行動を起こした時だけ。 [うちはサスケ は うずまきナルト に 恋をしている] 「マジかよ………」 導き出してしまった答えに、思わず呟いた言葉と赤く染まる頬を隠すように手で覆う。 それを誤魔化すように通常以上のスピードで作業をこなしていくサスケだったが、 心の中は混乱していくばかりであった。 しばらくの間は「男同士なんてありえない」「一族復興の野望はどうする」など 己の想いを否定すべく、サスケは必死に葛藤を続けていたが、 [波の国]において死を経験(実際は仮死状態だが)した事により、 心の中で何かが吹っ切れてしまい、 『抗って振り払えないのなら 受け入れるしかない』という考えに至ったのである。 白との戦闘において、千本に身体を貫かれ意識を失う間際、 「死んでしまうのなら想いを伝えておけばよかった」と まさに死ぬ程後悔した。あの気持ちを二度と味わいたくはない。 ―そう考えているものの、元来感情表現も言葉での意思表示も苦手であるサスケ。 そんな性格が災いしてか、波の国の任務が終わり木の葉の里へ戻っても、告白は出来ずにいた。 しかも更に悪い事に、最近ナルトがサスケを避けているようである。 「この間までは普通よりもイイ感じだったんだが……」 ナルトの誕生日でもある慰霊祭の日や、犬の捜索任務でナルトが負傷した時も、 照れ臭そうにサスケに微笑んだり、少し頬を赤らめるなど、まんざらではない様子だった。 しかし今は会話も顔を合わす事もない。 「何かまた怒らせるような事、言っちまったのかもな……」 悲しみの混じる呟きと共に、深い溜め息が洩れる。 沈んだ気持ちのまま、重い足取りで今日の集合場所へ向かうサスケであった。 |