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「隊長、随分肩が凝っているようですが……鍼治療でもしましょうか?」 気だるそうに首を回しながらゴキゴキといわせながら 煙草を吹かして酒を呷っているハーレムに、マーカーが声を掛ける。 「んぁ?ああ、いっちょ頼むわ」 「了解しました」 マーカーの顔を見る事なく、ヒラヒラと手を振って返事をするハーレムに、 いつの間にか横にいたロッドやGと顔を合わせてニヤリと笑い合う。 手早く針(!?)を構えると、ツボ目掛けてゆっくりと近付く。 プスッ だがその場所は肩凝りのツボではなく。 「………!?テメェら……!?」 身の異変に気付いたハーレムが振り返るが、事既に遅し。 「すいません隊長、全てはリキッドの為です」 「あとで眼魔砲なり喰らう覚悟はあるんで!!」 表情を崩さないマーカーと、申し訳なさそうなロッドの顔が、 次第に霞み、世界が暗くなっていく――――――――――――――――― 「ねーねー、昨日パプワくんに聞いたんだけどさ〜、 今日は家政夫の誕生日なんだって?」 朝食のクロワッサンとカフェオレに上機嫌になりながら、 ロタローがリキッドに尋ねる。 「ああ……そういえば今日だったな〜」 「気付いてなかったの?脳細胞使わないからそうなるんだよ」 「相変わらず手厳しいですなボッチャマ………」 容赦ないちみっこの発言にハラハラと涙を零しながら、 パプワがちゃんと覚えていてくれた嬉しさに微笑みを返す。 「じゃあさ〜、まだ今日1日あるんだし、お誕生日パーティーしようよ!! 皆も呼んでさ!!」 「おお、それはいい考えだぞロタロー」 「わう!!」 「え……いやちょっと待ってちみっこ達」 食器を片付けている背後でそんな会話がなされているのに気付き、 これから来るであろう発言を阻止するべく声を掛ける。 「じゃあ僕達遊んでくるから、家政夫はパーティー用に料理いっぱい作ってね!! 帰って来るまでに出来てなかったら……どうなるかわかってるよねv」 にっこりと天使の微笑みを浮かべながら、 手にはどこから出したのか凶悪な武器が握られている。 前回ハーレムの誕生日で味をしめたであろうちみっこ達の行動は 予想が出来ただけに恐ろしさは倍だ。 「ああ、やっぱりこうなるのね…」とガックリ膝をつき、 「…………………………了解しました、ボッチャマ方」 阻止しきれなかった敗者は涙を流しつつ、 陽気に歌を口づさみながら出ていくちみっこ達を見送る。 「こうなると予想は出来てたんだけどね……ハハハ」 などと自嘲の笑みを浮かべつつ、命令を遂行するべく、作業に移る。 食材を集め、刻み、調理。いつもと同じ行動ではあるが、量がハンパではない。 何せ島民全員の為の料理なのだ、よく食べよく遊ぶちみっこ達も ああ見えて本当によく食べる。おまけに元上司と同僚も間違いなく来る。 先の見えない終わりに、思わず溜め息も洩れるというものだ。 「誕生日なのに……何この扱い?!」 などと1人空しく喚いても聞く者はおらず。 むしろいればいたで色々問題があるのだが。 「……………………………?」 そこでふとした違和感に気付く。 今日に限って元上司のハーレムが飯をたかりにやって来ない。 いつも昼過ぎには「オラァ――メシよこせ〜〜」と叫び声がするのに。 「まあ、静かなのはいい事だけどな」 ただでさえ大変な量なのに、たかられてしまうと非常に面倒だ。 今日だかりは来てくれるな!!と呪いに近い祈りを込めつつ、作業を続ける。 「おう、リキッド。邪魔するぞ」 パプワハウスの扉が控えめにノックされ、 現れたのは心戦組で鬼の副長と恐れられる、土方トシゾーであった。 「トシさん、どうしたんスか?」 「いや……ガキ共にお前さんが誕生日だと聞いてな。 しかも自分で料理作ってるってんだからよォ、何も物はやれねェが せめて何か手伝いでもさせてもらおうかと思ってな」 照れくさそうに鼻を掻きながら言うトシゾーに、 ぱああっと花が咲くように笑顔を向ける。 「助かるッス!!手が足りなくて困ってたとこなんスよ!!」 「そうか、そりゃよかった」 「じゃあトシさんはこれお願いしてもいいスか?」 「おう、任せときな」 嬉しそうに言うリキッドに、こちらも嬉しそうに柔らかく微笑みながら、 任された料理を手早く調理していく。 ………さすがは心戦組料理担当(笑) そんなこんなで、パプワの指揮の下、会場はセッティングされ、 料理もトシゾーのおかげで何とか間に合い、 リキッドの誕生日を祝うパーティーは始まった。 「リッちゃーーーん!!誕生日おめでとう!! ワシからは熊の肝と特製のペアルックパジャマじゃけんのう!!」 「………どうも(ってかペアってお前とかよ!!)」 島の皆から祝いの言葉とささやかなプレゼントを貰い、 嬉しそう微笑みながら(一部迷惑そうに)にお礼の言葉を返す。 「ねえねえ、こっち来てリキッドくん!!」 その中、エグチくんとナカムラくんのムネキュンアニマルズに 腕を引かれて会場の中央に連れて行かれる。 そこにはロタローが照れくさそうに微笑んで立っていた。 「ロタロー?」 「えへへ、リキッドお誕生日おめでとう!! これは僕とパプワくんとチャッピーと、 エグチくん・ナカムラくんからのプレゼント!!」 「「「パプワくん、チャッピー!!」」」 「んばっ!!」「わうっ」 3人が声を揃えてそう言うと、後ろにあった幕がバサッと引かれる。 その下からはカワイらしくデコレーションされたケーキが現れる。 中央にチョコレートで[Happy Birthday リキッド]と書かれてある。 「これ……お前達が?」 「うん、イトウくんとタンノくんに教えてもらって作ったんだv」 「昨日パプワくん達とこっそり相談したんだよね〜」 「ね〜」 「それはいいから、食べて、リキッド!!」 切り分けられたケーキをそっと口に運ぶ。 多少いびつな形はしているが、精一杯の気持ちがこもっている。 「美味しい?家政夫?」 「……スッゲェ美味しい」 「ぼくらが作ったんだから当然だぞ」 「有難うな、ロタロー、パプワ。それにエグチくん、ナカムラくん」 「もー、泣く程〜?オオゲサだよ家政夫〜」 「ああ……………ホント美味しいよ」 「あれ、俺らが最後?」 「そのようだな……」 「随分手こずったしな、仕方あるまい」 しばらくして、大きな荷物を抱えた特戦部隊の面々が リキッドの所へやって来る。 だが、相変わらずハーレムの姿が見当たらない。 「あれ?隊長は?」 そう言ってキョロキョロ周囲を見回すリキッドをよそに、 面々は顔を見合わせてニヤニヤと笑いを浮かべる。 「いずれわかる」 「それよりちみっこ共は?」 「ああ……あそこ」 「ちみっこにちょっとした用事があるから待っててね〜」 「??」 そう言うと荷物を抱えたままパプワ達の所へ行き、 何か話し込んでいる。何か了承を得たらしく、 握手などかわしている面々を不思議そうに見ていると、 ロッド達がこちらへと戻って来る。 「そんでは俺達から、リッちゃんにプレゼントー!!!」 そう言うと荷物をゆっくりリキッドの前に降ろし、 包んでいた布を解くと………… 「…………!!……………!!!」 「………隊長!?」 包みから現れたのは、全身リボンで拘束されたハーレムだった。 しかも口には猿ぐつわ、手足はハーレムの怪力でも切れないよう、 頑丈なワイヤーで縛ってあり、さらにご丁寧な事に 動きを封じるツボに鍼まで挿してある。 呆然とそれを見ているリキッドをよそに、 マーカーがハーレムに近寄って鍼を抜き、 猿ぐつわを外してその場を離れる。 「テメェら!!一体こりゃ何のつもりだ!!!」 ようやく自由になった身体で部下に物凄い形相で怒りをぶつける。 「だってこうでもしないと隊長リボンなんかつけてくんないでしょ?」 「それに我々からのプレゼントなんですからじっとして頂かないと」 「事情説明しとけ!!!」 「ああ……俺昔同じ事させられたな……」 憤慨するハーレムをよそに、リキッドは過去のトラウマが開く思いだった。 「おじさん落ち着いて。ここからは楽しいからさ!!」 「……あ?」 ロッドの首を締めていたハーレムの側に、ロタローがひょっこりと顔を出し、 ハーレムをたしなめるように言う。 さすがに子供を睨み付けるような事はせず、怒りを鎮めるハーレム。 あの形相のハーレムに近付けるとは、さすが血筋である。 「これからリキッドとホシウミ湖に行ってもらうぞ」 「「はぁ?」」 パプワの発言に思わずハモる2人。 「な、何で隊長と2人で!?」 「いいじゃん、2人でラブラブしてくれば?せっかくの誕生日なんだし」 「わう♪」 「!!」 真っ赤になるリキッドに、ロッド達がはやし立てる。 隣を見ると、ハーレムはこちらを見てニヤリと笑う。 「ほんじゃ行きますか、リッちゃん」 「ウマ子はこっちで確保しとくぞ〜」 「朝食までには帰って来てねv帰って来なかったら酷いからvv」 |