「ッギャアアアアアァァァッッッッッッッ!!!!!!」





次の日の朝、島中に響き渡りそうな程の叫びと、
ドカーンと何かが激しくぶつかるような物凄い音が上がる。
声からして漂流していた少年のものであると気付いた高松が、
慌てて少年の眠る、ハーレムの部屋へと駆けつける。

「どうしたんですか!!!」

ドアを勢い良く開けると、少年が部屋の隅の壁に張り付き、
恐怖で凍り付いたような表情を浮かべて震えている。
高松をみつけると更に泣きそうな表情になり、助けを求めている。

「落ち着いて、何があったんですか?」

高松が近寄ると、震える手でしがみつき、部屋の隅を指差して
パクパクと唇を開閉させるが、恐怖のあまり言葉が出ないようだ。
その指差された先を見ると、1匹のライオンが壁に激突したらしく、
グッタリとした様子でのびていた。


「ああ……そういえば、申し上げるのを忘れてましたね」
「…………?」

ライオンを見て、高松が何かを思い出したように呟き、
少年にその場にいるようにと言うと、ライオンに近付いて行く。

「大丈夫ですか?」
「なっ……何で起こすんですか!?」

ポンポンとライオンの体を叩いて起こさせると、
少年は最も遠い位置にまで下がり、心配そうに様子を見ている。

「っ……てェ……何だってんだよ……」
「貴方が気を抜いてるからですよ、自業自得です」
「!…ああ、そうか」

ノソリとライオンが人の言葉を話しながら起き上がる。
それに対して恐れた様子もなく、高松が声を掛けると、
ライオンの姿がゆっくりと人の姿へと変わって行く。

「!!!???」
「驚かせて悪かったな」

コキコキと首を捻りながら言う姿は、
昨日声を掛けて来た金髪の男ーハーレムその人で。
事情が把握出来ない少年は、呆然とした表情でそれを眺めている。

「説明するのを忘れていてすいません。
 実はこの島には、人間がいないのですよ」






























「そういえば、お前の名前何て言うんだ?」
「………リキッド、って言います」



振る舞われた食事に口をつけながら、
漂流してきた少年ーリキッドは、先程高松という医者に
教えてもらった話を頭の中で反芻する。


 この島は現実とはかけ離れた世界で、住民の本来の姿は全て獣なのだという。
 それぞれが不思議な力を持っており、人の姿を模して生活している。
 そしてその島の秘密が守られるよう特殊な力が島にはたらいており、
 人間がこの島を見る事も近寄る事も出来ないはずなのだが、
 時としてリキッドのように島へ流れ着く事もあるのだそうだ。
 高松もその1人で、8年程前に同じようにして漂着したらしい。


何もかもがまるでお伽話のように現実味のない話だが、
隣に座っているハーレムが何よりの証拠で。
思わずまじまじとその姿を眺めてしまう。

「んだぁ?そんなに珍しいか、俺が」
「え……あ、はい。何か夢みたいで」
「高松のヤロウも同じような事言ってやがったなぁ。
 あの嵐の中で生きてただけ丸儲けなんだしよ、細かい事は気にすんな。
 まあお前をとって食うワケじゃねェし、ゆっくり体休めとけ」
「………ありがとうございます」

ガシガシと乱暴に頭を撫でられるものの、
ハーレムが自分を気遣ってくれている事が何となくわかるようで。
何となく嬉しくて仕方なくなり、
弱々しいながらも、柔らかい笑みを浮かべるリキッド。
その表情に、思わず心を奪われ、じっと見入ってしまう。

「?ハーレムさん?」
「ああ……いや何でもねェ」

















「ハーレム様、あの少年…リキッドがそうなのですか?」
「……そうらしいな」
「え〜?まだガキですよ?」
「年齢なんて関係ねェだろ」
「島が選んだんだ、間違いない」


夜、リキッドが眠る部屋の側で、ハーレム達が何か喋っている。
何となくその声に目を覚まし、内容を聞く為に
ゆっくりと彼らに近寄る。


「リキッドが、ハーレム様と番ってくれるとは思えませんが…」
「島の決定は絶対だ」
「俺は別に構わねェけどな」
「そうそう、意外にリッちゃんセクシーな体つきしてるし」
「ロッド、テメェ…」
「いやいやいや嘘です、そんなつもりないですから!!!」


何やらリキッド自身の事についての会話のようだが、
『番う』という言葉がいまいちよくわからない。
疑問を持ちつつ会話を詳しく聞こうとすると、
後ろから誰かに手を掴まれる。
ハッとして振り向くと、そこにいたのは高松だった。





「聞いてしまいましたか」

ハーレムの部屋に戻ると、高松が神妙な面持ちで溜息を吐く。

「あれはどういう意味なんですか?」

先程聞いた彼らの話を、理解している様子の高松に
素直に疑問をぶつける。

「そのままの意味ですよ。『番う』……つまり、ハーレムと貴方が
 『夫婦になる』という事です」
「………………えええええッ!?」
「声が大きいですよ」
「ででっ……でも、お俺男なんですけど?」
「性別は関係ないようですね。適齢の者が現れると、島が呼ぶんだそうですよ。
 私の時や今回のように……」
「はぁ………」

あっけらかんと言う高松に、リキッドは戸惑いを隠せないでいた。
突然ハーレムと夫婦になれ、と言われても正直どうしていいかわからない。
確かに、ハーレムは精悍な顔立ちで金の髪を日にきらめかせ、綺麗だとは思う。
『夫婦になる』という事はつまり、彼と夜を共にするという事で……

「顔が赤いですよ?……何だ、別に嫌というわけでもなさそうですね」
「!!!!!」

高松に顔を覗き込まれて冷静に指摘される。
図星だとは思わなかったが、赤面するのを考えればそうなのだろう。
自分でも信じられない事実に困惑を隠せないリキッド。

「もともと惹かれ合う運命のようですよ?島の魔力…ではなく」
「高松さんも…そうだったんですか?」
「ええ、最初は戸惑いましたけど、受け入れてしまえばあとは幸せです」

にっこりと柔らかく微笑む高松を見ると、悪い事でもないようだ。







「何だ、起きてたのかリキッド」
「あ…」
「んで、何でお前もいんだよ高松」
「まあ、彼とお話を色々と」
「何だそりゃ」
「それでは私はおいとまいたします。
 …ハーレム、くれぐれも優しくして上げて下さいよ」
「……なっ」
「それでは」

意地の悪い笑みを浮かべたまま部屋を出ていく高松に、
ののしりたい気持ちはあったが、目の前のリキッドが
何だか落ち着かない様子なので、そちらに気をとられている内に
高松を見失ってしまった。

「アイツから聞いたのか」
「……はい」
「そういうワケだ………俺達はいつもこうして、島の外の人間と番い、
 後世に命を繋いでいる。俺の番が回って来た時は、
 正直面倒くさいと思ったが……お前を見て気が変わった」
「………どうして」

目を合わせるのが恥ずかしくて、俯いていたリキッドが顔を上げると、
ハーレムの青い瞳と目が合う。

「お前に一目惚れした」
「……っ///」

ニヤリと嬉しそうに言われた言葉に、リキッドの体温が一気に上昇する。

「お前はどうだ?俺はお前の意思を尊重したい。
 俺と番えと言われて、嫌じゃないのか?」

真剣な表情で問うハーレムに、見惚れている事を自覚しながら、
リキッドは赤い顔を更に赤く染めながら、ハーレムをみつめる。

「最初そう聞いた時は驚いたけど………嫌じゃなかったよ」
「ほう、そりゃまたどうして」

意外な発言に、面白そうにリキッドを見ながら問いかける。

「俺も……一目惚れ、したから」










その後、金色のライオンに黒髪混じりの仔ライオンが数匹誕生したとか。










end.





































おまけ。
「そういえば、言い忘れてたけど、この島から出られねェからな」
「ええっ!!そ、そんな話聞いてませんよ?」
「当たり前だ、誰が言うかよ。俺がお前を離すかっつんだ」
「わっ…ちょっと、またですか?体もたないですって!!」
「観念しろよ、島中をライオンだらけにしてやる」
「住民絶滅しますから〜〜!!!」


































……ってワケで、リキッド誕生日おめでとう!!!
何だか全然リキッドの出番がないような気もしますけどね……(汗)

擬人化な島、という設定でお送りしました。
微妙に某BL漫画の設定を使わせて頂いております。
ハーレムや特戦部隊以外にも、マジックパパとかシンタローもいるんですけどね。
ガンマ団一家は皆この島にいるって設定にしたかったんですけども、
時間ないのでテキトーな設定になってしまいました、すいません……(汗)

ちなみに高松のお相手はグンマ…にしたいんですけども、
ルーザー様でもイイかなっていう。
グンマならグンマが仔を産みますけども、ルーザー様なら高松が。
どっちでもイイですけどね、ハレリキなので(笑)



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