|
とある昼下がり。よく食べよく遊ぶちみっこ達が珍しく、外に出掛ける事もなく 何かの本に夢中になり、声を掛けてもなかなか気付かない程に読みふけっている。 ようやく昼飯だと言うリキッドの声に気付いて、ハッと顔を上げる2人と1匹。 「何をそんな熱心に読んでるんだ?」 「花言葉の本だぞ」 「ハナコトバ…?」 「うん、イトウくんが貸してくれたんだ〜」 「わう」 「また乙女チックな……」 昼食をよそいながら、余程不思議だったのか尋ねてくるリキッドに、 ちみっこ達は上機嫌にその本について語る。 借りた相手が雌雄同体と言うのが複雑だが、それがウマ子でなくて (己の)精神衛生上良かったというか何と言うか複雑な心境でその本を見つめる。 「最初は何だそれ?と思って興味なかったんだけど、これがなかなか面白いんだよ〜」 「うむ、なかなか奥が深いものだな」 「わう」 「ふ〜ん……」 「家政夫も読んでみる?」 そう言って渡されたので、パラパラとページをめくってみる。 中には写真と共に花言葉やその植物の学名などが記されているようだ。 「へえ……随分詳しく書いてあるんだな…」 「でしょ?面白いよね〜。まだしばらく借りてるつもりだから、学のない家政夫も見て勉強したら?」 「………一言余計だ………けど、面白そうだからお言葉に甘えるかな」 サラリと吐かれた毒にガックリときつつも、家事の合間に読む雑誌も特になかったので、 いい暇潰しになりそうかな、などと考えつつ本を脇に置いて食事を再開する。 「ーで、これからこの島の植物の花言葉も調べてみようと思ってるんだ。ね〜、パプワくんv」 「んば」 食事を食べ終わり、早速その目的を果たすべく、出掛ける準備を始めるちみっこ達。 食器を受け取って流しに置きながら、外へ駆け出して行く背中に声を掛ける。 「夕飯までには帰って来るんだぞ?」 「わかってるって。行こう、パプワくん、チャッピー。 あ、本は重いし置いていくから、家政夫読んでていいよ〜」 「へいへい、いってらっしゃ〜い」 軽快な足音が去って行くと、賑やかだったパプワハウスに静寂が下りる。 ちみっこ達が見えなくなるまで見送って一つ伸びをすると、リキッドは家事に戻るべく家へと引き返した。 片付けや掃除、夕飯の仕込みも済み、しばらくの間暇になったリキッドは、1人お茶を楽しみつつ、 先程見せてもらった花言葉の本を再び開きつつ、穏やかな午後のひとときを楽しむ。 「ほ〜お?お前が本読むなんて珍しい事もあったもんだ……明日は雨かもなァ?(笑)」 「!? た、隊長……」 突然背後から声を掛けられたと思ったらヌッと大きな影が差し、金のカーテンが視界を遮る。 思いのほか集中していたらしく、ハーレムが来ていた事に気付かなかったリキッドは ビクリと飛び上がるようにして背後の存在を振り返る。 「リキッド、腹減ったから何か作れ」 「へいへい、わかりましたよ〜っと……」 毎度聞かされる台詞に、慣れた様子で返事をしつつ台所へ向かう。 トントンと小気味のいい音といい匂いが流れて来る中で、ハーレムはテーブルに置かれている 先程リキッドが読んでいたらしい本に眼を留め、それを引き寄せる。 「……花言葉、だァ!?何つーメルヘンチックなモン読んでんだオメェ」 「メルヘンって言葉を隊長の口から聞くとは思わな―」 「あ゛ぁ!?」 「………何でもないッス(汗) それはコタロー達がイトウから借りて来た本なんスよ」 「…花言葉、なあ………」 ふうん、と気のない返事をしつつ、物珍しげにパラパラとその本をめくっているハーレム。 自分と同じように、その本に興味をひかれたらしい姿にクスリと笑みをこぼしながら、 リキッドはハーレムに背を向けて料理を再開する。 しばらく、何気なくパラパラと本をめくっていたハーレムだったが、ふと何かに気付いて手を止める。 そのページにはしおり代わりなのか、何故か葉っぱが挟まっていた。 先程見ていた限りそんな事をした様子もなかったので、リキッドではないと考え、 ちみっこ達かあのナマモノだと推理し、何を調べたのか興味をひかれ、そのページを読んでみる事にする。 「………………なるほどなァ」 「?隊長?」 ニヤリと口元を歪めながら何やら呟いたハーレムに、呼ばれたのかとリキッドが振り返る。 だがこちらに顔が向いておらず、まだ本をパラパラとめくっている様子から、独り言だと理解して、 早くしろと怒られる前にサッサと作ろうと体勢を戻す。 一方そんなリキッドの視線に気付く事もなく、何やら気付いた事にニヤニヤとしていたハーレムは、 どうやらそれに関連する事を調べているらしく、ブツブツと呟きながらパラパラとページをめくり、 目的の所へ辿り着くとピタリと手を止めて、その項目に指をあててなぞりながら熱心に読み込み始める。 それが読み終わると、今度は天井を見上げて視線をさまよわせながら思考の海に意識を飛ばす。 背後が妙に静かな事に不気味さを感じつつ、調理を終えたリキッドが振り向くと、 ハーレムは何やら真剣な面持ちで考え事をしている様子だった。 「隊長?ご飯出来ましたよ」 「お?……ああ」 声を掛けられた事にハッと我に返ったハーレムは、その様子にクスリと笑うリキッドから茶碗を受け取ると、 食事を開始する。 「随分熱中してたみたいッスね、何調べてたんスか?」 食後のお茶を出しながら、先程の事を尋ねるリキッド。 オッサン臭く(実際オッサンと呼ばれる年齢ではあるが)楊枝をくわえ、歯に詰まったものを取り除きながら、 その唇にニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。 「ん〜?何だァ?リッちゃんは本に俺の興味が移っちまってご不満かァ?」 「なッ!!何でそうなるんスか!!」 「意外とヤキモチ焼きか?リッたんは〜v」 「ッだから違いますって!!!」 真っ赤になって声を荒げるリキッドに、ハーレムは悪戯が成功したようにクックッと楽しそうに喉を鳴らす。 それに不満そうに頬を膨らませて抗議の意を表すリキッドの頭をポフポフと叩きながら、 ハーレムはケラケラと笑い「ご馳走さん、またな〜」と言って去って行ってしまった。 ヤケに呆気なく去って行ったハーレムにポカンとした表情を浮かべつつ、 その姿を見送ったリキッドは、数分後ようやく我に返って、ハーレムに出した食器の片付けを開始する。 「………あ、結局何調べたのか教えてくれなかったな、隊長…ってかはぐらかされたんじゃねェのアレ!!」 完全ガキ扱いじゃねェか!!!と憤りつつ、ガシガシと食器に当たり散らすのだった。 「あれ、オジさん?何でここに?」 「よう、ちみっこ共」 午後の日差しの中、楽しそうに遊ぶちみっこ達の下に、ハーレムがやって来る。 先程パプワハウスを出た足でここまで来たらしい。 「どうしたの?僕らに何か用?」 「ああ、ちょっと聞きたいんだがな?」 そう言ってちょいちょいと手招きし、耳を貸すようにジェスチャーする。 コタロー達が疑問に思いながら近寄って耳を傾けると、コソコソと何やら尋ねている様子。 「それならホシウミ湖の近くにあるぞ」 「……ってかそりゃこっからどう行けばイイんだ?」 「え〜、僕も行ってみたいな〜」 「じゃあ案内するぞ〜」 「わうう〜」 「お、そりゃ有り難てェ」 2人と1匹のちみっこを案内役に、ハーレムは目的の場所へ向かう。 「ねえオジさん、何でそこへ行きたいの?」 途中、歩き疲れた様子のコタローを肩車でおぶってやりながら、ジャングルを進んでいると、 頭上から顔を覗き込むようにしてコタローが理由を尋ねて来る。 「ん?そりゃあ多分、お前等と同じ理由だと思うぜ?」 ニヤリ、と笑い掛けるハーレムに、コタローの顔がパッと輝く。 「え、じゃあオジさんも家政夫の?」 「そーゆーこと。でもお前等とは違うものにしたけどな」 「あ、そうなんだ、何にしたの?」 「それは行くまで教えねェ」 「ケチー」 などとほのぼのした雰囲気を漂わせながら、ほんわか親子ご一行(笑)は目的地を目指すのだった。 |