あ〜、暇、暇過ぎ。

暇で人が殺せるなら、俺10回は死んでるなってくらい、暇、ヒマ。
紅丸はナンパしてんだか知んねェけど、携帯捕まんねェし、
真吾もユキもダチと遊んでるって言うし、他の面々もことごとくアウト。
今日に限って誰も捕まらねェ……

せめて庵だけでもいてくれりゃ良かったんだけどさ〜……
その庵もライブだかの打ち合わせで出掛けてるし。




今日……俺の誕生日だったりすんだけど………?



別に盛大に祝って欲しいワケじゃない。
大切な人とその日1日ずっと一緒にいれるだけでいいんだ。

庵と一緒に…………―――

そう願うのって贅沢な事なのかねえ。



―って何か俺らしくねェ考えだな、いかんいかん。

らしくなく考え込んだせいか(俺だって悩む事はあるんだけどさ)
何となく腹が空いたから何か食べようとキッチンを漁るべく立ち上がる。

「あ」
数歩進んで思い出した。
昨晩で食い物使い果たしたから、今日買いに行かねェとって思ってたんだっけ。
仕方なく、買い出しに出掛ける為コートやマフラーを取りに自室へ。

―しかしなぁ、自分の誕生日に、自分で買い出し行って、
自分でメシ作って自分で喰うって………絵的にかなり虚しくて痛いんだけど。

カレンダーを見る。
今日の所には俺の字で『庵 打ち合わせ』とその時刻が書かれてあるだけ。
「庵の奴……今日が何の日か覚えてなかったのかな〜……」
かといって『俺の誕生日』とか自分で書くのも恥ずかしいし、
「祝え」って強要してるみたいで何かヤだしなぁ……
でも、昨日の内に……いや、もっと前に言ってれば、一緒にいてくれたかも。
いやしかし……「一緒にいて欲しい」なんて恥ずかし過ぎて口が裂けても言えないっての。
それに「お前は乳離れできてないガキか」って絶対バカにされるだろうし。
意地張ってるってわかってるけど……恥ずかしいんだよ!!


………今日くらい、素直になって「傍にいて欲しい」って言えばよかったなぁ……


―うっし、今日1日は素直でいよう。

なんて1人で握り拳作って心の中で宣言しつつ(部屋1人なのに声に出すのは虚しいしな)
外へ出る為にコートを羽織ってマフラー巻いて、玄関の扉のノブに手を掛ける。

―そしたらノブも回してないのに勝手に扉が開いた。
俺は既に扉に向かって体重を掛けてたもんだから、
そのまま外に向かっていく扉に合わせて前のめり。
「うわわわわッ」
体勢立て直す間もなく地面とコンニチワー………のハズが、それより前に堅めの何かに激突。
同時に動きが止まって倒れる事は免れたけど、鼻をキョーレツに打った。
「ひてててて………」

「大丈夫か」
受け止めてくれたのはもちろんコイツ―八神庵―しかいねェんだけどな。
気配とかわかるだろうに、もうちょっと出るのを入り口で待つとか考えりゃいいのにさ〜
……うう……鼻痛ェ……
―とか今更恨み言言っても仕方ないか、受け止めてくれたんだしな。



―ってか俺、今コイツに抱き締められてるカッコじゃねェの!?
しかも玄関先とはいえ往来で!!

「おっ、おう。サンキュな」
鼻の痛みも吹っ飛んで、とりあえず庵から離れた。
ヤベェ……俺今きっと顔真っ赤だ。


「出掛けるのか」
「―は、え!?……あ、晩メシの用意買いに行こうと思って」
な、何動揺してんだよ俺、落ち着けっての
「そうか」
……何か今一瞬庵の顔が不機嫌になった気がしたけど……気のせいか
帰って来たみたいだし、一緒に買い物付き合ってもらうか。
「あのさ、お前も一緒に―」
「その必要はない」
「は?」

「説明は後だ、ついて来い」












何だかよくわかんないまま、庵の車に乗ってどっかへ。
途中、説明を求めたんだけど
「行けばわかる」なんだそうで。
何なんだよーって膨れてたら車が止まった。
降りてみるとそこはライブハウス、庵や紅丸がよく使ってるトコだ。
「何?お前のライブに招待してくれんの?」
どこかに電話してたらしい庵が、通話を終えるのを見計らって声を掛けてみたけど、
顎をしゃくって『入れ』と指示するだけで何も言ってくんない。

……何か、お前 今日いつもより口数少なくない?何か怒ってんのか?


入り口には、いつもある貼紙とか看板とかの広告が全くない。シークレットライブ?
階段を下りると、扉には
『本日貸切の為、休業とさせて頂きます』って貼紙が。……休業?
ますますワケわかんなくなって庵を見たけど、相変わらずの無表情で扉を開け、
背中を押して俺を中に入るように促す。
中は中で真っ暗。庵が扉を閉めたせいで、更に真っ暗になって、自分の姿も見えない。


「な……何するつもりなんだよ、おま――」
パパパパン!!

庵に問い掛けようとした俺の言葉を遮って、何かが破裂する音が響く。
それに驚いていると、何かがふんわりと俺の頭に触れて来た。
「な、何だァ!?」
何とかそれを払い除けようと暗闇でもがいてたら、パッと部屋に電気が灯る。
急に明るくなったもんだから、目が開けられずにいると―


「誕生日おめでとー!!!」


色んな声が俺に向かってふってくる。
ようやく光に慣れて周囲を見回すと、沢山の人が俺を囲んでいた。
その中には、捕まらなかった紅丸や真吾、ユキもいる。

状況が把握できずにポカンとしていると、
後ろにいた庵が俺の頭に付いたクラッカーの紙を取り除いて、
(さっきの音はクラッカーだったのか、と今更気付いてみたり)
ぽふんと手を置いた。
「今日はお前の誕生日だろう。だから皆で祝ってやろうという事になってな」
何ボーッとしてるんだ、って苦笑しながら説明してくれる。
庵…ちゃんと覚えててくれたんだ……
そんな事を思いながら庵を見てると、囲んでた輪の中から紅丸が出てくる。
「そんで、お前に内緒で色々計画したってワ・ケ」
驚いたか?、って楽しそうに笑いながら紅丸が言う。
「あぁ………マジでビックリした………」
まだ呆然としてるよ俺。
皆が?俺なんかの為に?
うわ……ちょっと泣きそうかも……マジで嬉しい……
「ぁ…有難うな…スッゲェ嬉しい…」


「よっしゃ!!って事で 皆!!騒ぐぞーーー!!!」
「「おーーーーーーっ!!!」」

紅丸の掛け声と共に輪が散って、静かだった周囲が一気に騒がしくなる。
俺は俺で少し離れた位置にあるバーカウンターに座らされる。
……ちょっと王様気分でイイかも。


こうして見ると、結構いるなぁ……
ここにはバーテンとしてキングがいるし、
舞にアンディ…大門…神楽……ガッコのダチ……
皆ここに来てくれて、口々に「おめでとう」って言ってプレゼントをくれる。
「おめでとう」って祝ってくれるだけで嬉しいのに……何か悪いな…

―――――あれ?


「Happy Birthday キョウ!!元気そうで何よりだ」
「テリーじゃねえか!!久し振り!!」
拳をガツンとぶつけ合って、久々の再会を喜び合う。
「いつ日本に来たんだ?」
「数日前さ。マイとアンディに呼ばれて何かと思ったら……こういう素敵なプランだったワケさ」
隣に座って缶ビールを飲みながら、悪戯っぽく笑って俺にウインクする。
俺もそれに答えるように笑って、自分の缶ビールをカツンとぶつける。
「まだしばらくこっちにいるつもりなら、また手合わせしようぜ」
「ああ」


「あ、テリーさん!こんな所にいた!!」
「お前がいねェと始められねーじゃねェか」


俺達が対戦の約束をしていたところへ、2人がやってくる。
1人は紅丸、もう1人は……

「お前、アテナじゃねェか」
「あっ、京さん。お誕生日おめでとうございます!!」
「あぁ、ありがとう」
「何だよ、もう始めるのか?」
ポカンとしてる俺の隣で、テリーが不服そうに言って立ち上がった。
「そんじゃ俺、行くな。―おっと、これプレゼントだ。―んじゃ、楽しんでくれ」
ポン、と手に小振の箱を落として去って行くテリー
それに続こうとしてたアテナが「あっ」と声を上げる。
「そうだ、これ、私とケンスウから」
2人からで悪いんですけど、と申し訳なさそうに包みをくれる。
―そっか、ケンスウも来てるのか〜。そりゃアテナ1人では来させねェよな〜
「有難うな」
「じゃ、また後で!!」
駆け去るアテナを見送る。ってか何か急いでたけど、また何かやんのか?
――そういえば庵もいねェし。
「これからとっておきのが始まるから、楽しみにしとけよ」
「とっておき?」
まだ隣にいたのかお前。
ニッと笑って俺にプレゼントをくれる。
―言ったら怒られるから言わねェけど、お前と舞からは高額なの期待してんだ、俺。
去ろうとした紅丸が、何か思い出して引き返してくる。
「そうそう、これ八神にはみつかんないように、コッソリ読んどけ」
そう言って小さな封筒を手渡される。
………手紙?庵にみつかんねェようにって何だ?
………何かさっきから謎ばっかだ。
不思議そうに見ている俺にニッコリ笑って。
「じゃ、楽しんでってくれよな!!」
と言って去って行った。


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