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本日の任務は[庭の雑草採り] 相変わらずの冴えない任務内容に不服を訴えるかと思われたナルトは、 ここではないどこかを虚ろにみつめたまま、ユラユラと身体を揺らして雑草を抜いている。 サスケもサクラも最初は気にも止めずに己に割り当てられたスペースを処理していたのだが、 ナルトの奇妙な動きがどうしても視界に入り、次第に任務どころではなくなってくる。 「―サスケくん?」 ハラハラとした様子でナルトを見守っていたサクラを横目にサスケがすっくと立ち上がり、 ナルトのいる場所へとツカツカと歩き出す。 ナルトの方は相変わらずボンヤリとしていて、サスケの接近に気付いた様子はない。 「おい ナルト」 苛ついた様子で声を掛けるが、ボンヤリとしたまま返事がない。 仕方なく作業をしている腕を掴んで引き上げる。 「おい」 「うわッ!?なっ何だってばよサスケ!!」 心底驚いた様子で、掴まれた腕を振り解いて立ち上がる。 「呼んでんのに気付いてなかったのかよ……いいから来い」 「えっ?………ちょっ……」 また腕を掴まれ、カカシの下へと引っ張られる。 何か文句を言いたかったが、サスケから放たれる有無を言わせない雰囲気に呑まれ、 上手く言葉が出ないので、されるがままに歩く。 「ん〜?どした?サスケ」 部下に作業をさせ、呑気に木陰で18禁本を読みふけっていた上司の前に、 グイッと引っ張ってナルトを立たせる。 「集中力が乱れて任務の邪魔だから預かっといてくれ。コイツの分は俺がやる」 「!?」 冷たく言い放つサスケに目を見張り、立ち竦むナルトを置き去りに、 用事は済んだと言わんばかりにさっさと持ち場に戻って行く。 「―あ、あたしも半分やるわ、サスケくん」 「ああ、頼む」 「で、でもさ!!」 自分そっちのけで進行していく話に、慌てて反論しようと3人を見て叫ぶ。 「いいからアンタは休んでなさい。そのままの状態で作業されたら、 こっちが気になってそれどころじゃないのよ」 「うぅ………」 サクラにそうまで言われては何も言えなくなり、悔しそうに唇を噛んで俯く。 「そーそー。せっかくサスケが休んでろって言ってくれたんだから、甘えときなさいって」 「……………うん」 自分の隣をポンポンと叩いて座るように促してやると、 不満そうにしながらもナルトが寄って来て腰掛ける。 その様子を肩越しに見ていたサスケは、面白そうにニヤニヤと 自分を見ていたカカシと目が合ってしまい、ギロリと睨み返す。 「まぁったく、素直じゃないねェ〜」 クスクスと楽しそうに笑うカカシを、何の事か検討もつかないナルトが不思議そうに見る。 「何だってばよ??」 「別に〜、何でもないよv」 「???」 まだ笑いが収まらないカカシを怪訝そうに見ながら、?マークを周囲に浮かべて首を傾げる。 いい加減そろそろ笑うのを止めないと、 何かを投げてきそうな気配を漂わせる遠くの相手をチラリと見て、話題を変える。 「それよりナルト、お前ここ何日か眠ってないデショ」 「そっ……そんな事―」 「目の下クマ作っといて『何もない』とは言わせないぞ〜?」 慌てて弁解しようとするナルトの言葉を遮り、 『あの砂の忍の子まではいかないけどネ』と目許を示してやると、グッと押し黙ってしまう。 「悩むのはイイが、それで任務に支障をきたすのは……ちょっとどうかと思うぞ? 不眠症に陥ってるなら、幻術でも掛けて無理矢理眠らせてやろうか? ま、かなりの荒療治ではあるが、確実に睡眠は取れるぞ」 「!!………」 少し驚いた表情でこちらを見る相手に、自分の読みが間違っていない事を知る。 しかし不眠の原因が何かまでは教えてはくれないようだ。 「皆に心配掛けたくないと思うなら、2人が作業終わるまでの数時間でも眠っとくんだな」 深く追求するのはやめて、提案の是非を問う。 優しい目と暖かく頭を撫でてくれる手に安堵の表情を浮かべながら、小さく頷く。 「お願いしますってばよ……」 「りょーかい。時間が来たら解いてやるからな。そんじゃ、おやすみ〜〜」 申し訳なさそうなナルトの表情に微笑みかけてやりながら、 素早く印を結び、チャクラを練り込んでいく。 その独特の空気の変化に気付いたサスケとサクラが振り返ると、 ちょうどナルトがカカシの膝元へゆっくりと沈み込むところだった。 「先生!?ちょっ…ナルトに何したのよ!?」 倒れ込むように見えたらしく、心底驚いた様子で 慌ててナルトに駆け寄るサクラに、落ち着くように促す。 「何があったか知らないけど、ここのところ眠れなかったみたいだから 幻術で眠ってもらいました。もちろん本人には了承済みだから」 事情を説明してやると、サクラがホッと息をついて空気を緩める。 その先で、こっちに来る事もなくジッと様子を見ていたサスケからも 傍目にはわからないが、安堵する気配が伺われる。 「何か悩み事でもあったんだろうねェ…… ナルトも悩めるお年頃になったか〜……」 穏やかな表情で眠っている金色の髪に、優しく指を絡めながら ウンウンと感慨深げに頷き呟く。 「オヤジ臭ッ……」 「ヒドいな〜サクラ〜……先生はまだピチピチの20代なんだぞ〜?」 「自分でピチピチとか言わないでよ………」 乙女なポーズで身をくねらせて傷付いた風を装おうカカシに、 心底呆れたらしく、ツッコミも鈍る。 「―さて、もうひと頑張り!!」 グッと拳を握って気合いを入れて立ち上がり、ナルトを見て微笑むと、持ち場へ戻って行く。 それを見送りながら、別方面から来る視線に『心配するな』の意味を込めて 作業に戻るように手を振ってやる。 「ホント、ウチの部下は面白いのばっかだね〜」 18禁本を再び開きながら、クスクスと楽しそうに呟き、 眠る子を動かさないように気を付けながら、樹にもたれかかった。 ナルトが目を覚ますともう任務は終わり、帰路についていて。 申し訳なさと己の不甲斐なさに2人の顔を見る事が出来ない。 とりあえずお礼と謝罪だけはきちんとする。 2人は「気にするな」と怒った様子もなく、ナルトはますます俯いていく。 全員で報告書を提出しに受付へ向かうと、 その途中でイルカを発見。 カカシの横を歩いていたナルトは、2人に気付かれないよう、カカシの服の裾を引っ張る。 その無言の意図を読み取って、 「後はやっとくから、行っといで」 そう言ってクシャクシャと頭を撫でて、背中を押してやると、 小さく頷いてイルカに向かって突進していく。 「おう ナルト、任務終わったのか?お疲れさん」 向かってくる姿をみつけて、優しく微笑み掛けてくれるイルカの腰に、ギュッとしがみつく。 「――――ナルト?」 その身体が小刻みに震えているのに気付き、抱え上げてやると、顔を見られたくないのか 首に腕を回して、肩口に顔を埋めてくる。 その頭に手を添えて宥めるように撫でながらナルトが来た方向を見ると、カカシと目が合う。 イルカはカカシに頷きだけ返すと、その場を去って行く。 「ホントにどうしちゃったのかしら……あそこまで元気がないと調子狂っちゃうわね」 心配そうに呟くサクラに、 『ホントにナルトのお姉さんみたいだね〜』と心の中で感心しながら、 「ま、イルカ先生に任せたから大丈夫でしょ」 「……それもそうね」 呑気なカカシの口調に、安堵した表情を返して、受付へ向かう。 その最後尾を歩きながら、ナルト達が去った方向をいつまでも見続ける漆黒の瞳。 「………ウスラトンカチ」 そう呟いた声色は、普段とは全く違った響きをもっていた。 |