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自宅へナルトを連れ帰ったイルカは、グスグスと鼻をならして泣くナルトに、 水で冷やしたタオルと、ハチミツを入れて甘くしたホットミルクを渡してやる。 普段めったな事では涙を見せないナルトが、ここまでの状態になるのを 珍しく思いながら、落ち着くまで抱き締め、頭を撫でてやる。 数分そうしていると気分が落ち着いたようで、タオルから顔を上げる。 「どうした?今日の任務で辛い事でもあったのか?」 「…………………」 心配そうにナルトの表情を伺っていると、ミルクを1口飲み、こちらを見る。 「イルカ先生……」 「ん?」 「俺…もうすぐ死んじゃうのかなぁ……」 「??どういう事だ?」 『はぁ?』と思わず言いそうになったが、ナルトの顔があまりにも真剣なので言葉を変える。 「だって俺……最近変なんだってばよ…… いつものラーメンがあんまり食べられなくなったり、顔が急に熱くなったり、 キュウッて胸が締め付けられるみたいに痛くなったりさ〜…… 何か…変な病気にかかっちゃったのかなぁ……」 言いながらジワリと目が熱くなっていくのを感じて、落ち着ける為にタオルを押し当てる。 しかし相談相手のイルカから返答がないので、不安になって顔を上げると、 その顔は『ポカーン』という音が似合いそうな程、何とも間の抜けたものだった。 「イルカ先生……?」 驚きつつも声を掛けると、それが合図だったように、イルカが突然笑い出す。 「何だ……そんな事か〜!!俺は何事かと思ったぞ〜?」 「『そんな事』って……ヒドイってばよ…俺……ホントに恐くて……ッ」 「あわわわわ……スマン、ナルト」 大笑いされてしまったショックで、また目に涙がジワリと浮かんでくる。 それを見て慌てたイルカは、よしよしと頭を撫でて宥める。 「安心しろ、ナルト。それは別に病気なんかじゃない」 「………そうなの?」 その言葉に、驚いたように首を傾げる ナルトの視線の高さに屈んで、ニッコリと微笑み掛ける。 「それはお前が誰かに恋をしてるって事だ」 「…………………コイ?」 突拍子もない事で、まだ言葉を呑み込めていない様子のナルトに、 「ああ、何にも代えられない程、大好きな人が出来たって事だな!」 より分かりやすい言葉に変えて状況を認識させ、嬉しそうに肩を叩く。 「大好きなって………えぇえぇ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?」 ようやく頭で理解出来たらしく、顔を真っ赤にして慌てふためくナルトの横で、 『ナルトも成長してるんだなぁ……』 まるで父親のように、嬉しさ半分、寂しさ半分な遠い目をしながら、 ウンウンと感慨深げに頷いている。 「―それで?誰を好きになったんだ?サクラか?」 「…………え?」 ニコニコと微笑ましそうに尋ねられて、ナルトの思考が止まる。 さっきまでは奇病に冒されたのだと思って「どうしよう」とか 「自分は死んでしまうんじゃないか」とか「皆に伝染してしまうんじゃないか」とか そういう事ばかり考えていたので、 『自分が誰に恋しているのか』という事など思いもしなかった。 まあ奇病だと思っていたものが『恋心』などというシロモノだと 知らなかったのだから無理もないが。 だが誰を『好き』なのだろう。 『好き』だけで言えばカカシやイルカも『好き』な部類だ。 己の内に潜む『九尾』の存在を知りながら、 自分をあの目で見ない大人で、自分を認めてくれる。 サスケやシカマルなども、どちらかと言われれば『好き』な部類だ。 だが今までにあんな症状が出た事はない。 ………自分が『好き』だと思っていたサクラにさえ。 その『好き』とは違うのだろうか……?? すっかり考え込んでしまったナルトに苦笑しつつ、 「自覚したんだからすぐにわかるさ。良かったら俺にも教えてくれよな」 そう言って『お祝い』だと夕飯を振舞ってくれただけでなく、泊まらせてもくれる。 里の大人から疎まれている自分を温かく迎えてくれる存在に感謝しながら、 久々に1人ではない安心感に包まれ、何日かぶりの自然な眠りにその身を委ねた。 |