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買い物を終え、ナルト宅に戻って来たサスケ。 ナルトは起きた様子もなくいまだ眠り続けているようだ。 起きて運んで来たサスケがいなければ、 多少なりと寂しい思いをするだろうと心配したが、 無駄な事だったようで、ホッと息をつきながら 袋を広げて食材の調理に取りかかる。 テキパキと料理を作り上げていきながらも、時折ナルトの様子を伺ういながら 温くなったタオルを取り替えてやるなど、 かいがいしく看病を続けるサスケ。 作り終えて一息ついた頃、ナルトがかすかに呻きを洩らすので、 起きたかと側に近寄ると、何かにうなされているのか、苦しげに眉を寄せる。 「大丈夫だ、俺が側にいる」 ギュッと手を握り締めて囁くと、安心したようにホッと息をつき、 再び穏やかな寝息に変わる。 この声が、この想いが伝わればいい、と願いながらナルトを見守る。 『それにしてもコイツ…意外に睫毛が長かったんだな…』 容態が安定したせいで余裕が出て来たのか、 普段顔を合わせてはいるものの、こんな近くでじっくり見る機会はそうそうない。 この機を逃すか、とナルトの顔をまじまじとみつめる。 『髪はフワフワで柔らかいんだな…カカシやイルカ先生が撫で回すのもわかるな』 愛おしむように、金の髪に指を絡ませ、その感触を楽しむ。 落ち着かせるようにゆるやかに髪を撫でていた手は、次第に頬へと滑っていく。 『頬も柔らかい…それに……――』 熱のせいでほんのりと上気した赤い頬と、苦しげな息を吐く、うっすらと開かれた唇。 そこもまた赤く色付いて艶やかにサスケを誘う。 そっと指先で触れると、しっとりと吸い付くように柔らかな弾力を返して来る。 『……っ……相手は病人だってのに…何考えてるんだか』 どれだけ己を諌めようとも、視線は唇から離れてはくれず、 そこに己の唇で吸い付きたい衝動を掻き立てられる。 我慢が出来ずに指を添わせると、ピクリとナルトの瞼が震え、 その下から空色の瞳が現れる。 ……調子に乗って触れ過ぎたようだ。 「悪ィ、起こしちまったみてェだな」 「…………サスケ…?」 ボンヤリとした表情のまま、眼をこすりながらゆっくりと起き上がる。 その幼さを残す行動に、先程の荒ぶる気持ちが和らぎ、思わず微笑みが洩れる。 頭をポフポフと叩きながら立ち上がると、いまだ虚ろな瞳のナルトに声を掛ける。 「起きたんならメシ食って薬飲めよ。 メシの準備はもう出来てるから、一緒に食おうぜ」 夕食の美味しさに上機嫌&ハイテンションになったらしいナルトは、 いつもの元気を取り戻したようにはしゃぐ。 それに対していつものように皮肉めいた返答を返すものの、 サスケも嬉しそうな表情を浮かべている。 1人ではない久々の食事を終え、ナルトが薬を飲むのを確認したサスケは、 ナルトをベッドに向かわせて、眠るように促す。 「あのさ、あのさ……サ、サスケは帰んねェの?」 サスケに布団をかけてもらい、中にモソモソと入り込みながら、 上目遣いにサスケを見上げながら、ためらいがちにナルトが問う。 「……俺がいちゃ眠れないってんなら帰るけど」 「そっ……そうじゃないけど!!」 早く帰れと言わんばかりの言葉に、ムッとした様子のサスケが 不機嫌そうに言うと、慌てて否定するように叫ぶ。 「そのっ……カゼ伝染ったら困るし、俺もう大丈夫だから――」 「夜中に水飲みに起き上がって途中でブッ倒れたらどうすんだよ、このウスラトンカチ」 憮然とした態度で言うサスケのウスラトンカチ発言に、ムッとするナルト。 「俺回復力強いからそうはなんねってば。だからほっといてくれてイイってばよ」 更にその言葉にムッとするサスケ。 「……邪魔なら邪魔ってそう言えよ。カカシかイルカ先生に代わってもらうから」 「そんな事言ってねェってばよ!!伝染するから帰れっつってんの!!」 段々お互いのテンションが上がり、激しい言い合いが始まる。 サスケはチッと舌打ちすると、自分を帰らせようと押すナルトの手首を掴む。 「……っ、お前が好きだから心配してんのに、帰れって何だよ!!」 「え……?」 「っ!!」 思わず勢いで言ってしまった言葉を、ナルトの表情を見て気付くが 事、既に遅し。 「今………何て?」 1度こぼれ出してしまった想いは、もう塞き止める事が出来なくなる。 自分の予想外の発言に聞き返される事は予測出来たものの、 それに答えるには照れ臭すぎて。 「何度も言わすなよ……くそっ……… こんなタイミングで言うつもりじゃなかったのに……」 軽く自己嫌悪に陥るが、まっすぐみつめてくる空色には誤魔化せない。 ボリボリと頭を掻いて俯きながら、1つ大きな溜め息をつく。 「そうだよ……俺はお前の事が………好きだ」 「………………」 「…ナルト?」 返事のない相手に、不安になって顔を上げると、 そこにはサスケ以上に顔を赤く染めたナルトの姿が。 「サスケが……俺の事……好き?」 呆然としたように何度もその言葉を繰り返す。 その内に段々と顔の赤みが増して来て、フラフラと身体を揺らすと、 そのままバタンと後ろに倒れてしまった。 「ナルト!?」 慌てて額に触れると、先程よりも熱くなっている。 サスケの告白を受けて動悸が激しくなったせいで熱が上がったようだ。 水に浸したタオルを額に被せてやりながら、サスケは苦笑を浮かべる。 しばらくすれば薬が効いて熱も下がるだろうし、 このまま起こさないでやろうとベッドから立ち上がる。 何かあればすぐに起きられるようにベッド脇に座り込んで、そっと手を握る。 ――暗い夜も1人ではないと伝えるように。 |